機械学習やクラウド活用、パフォーマンス向上で設計業務を支援する「AutoCAD」:メカ設計インタビュー(2/2 ページ)
CADソフトの最新バージョン「AutoCAD 2024」の提供を開始したオートデスク。機能強化ポイントやAutoCADの製品戦略などについて、米Autodesk AutoCAD プロダクトマネジメント 担当ディレクターのダニア・エル・ハッサン氏に聞いた。
最新バージョン「AutoCAD 2024」、その他の強化ポイントは?
――AutoCAD 2024の強化ポイントについて、「マークアップ読み込み」や「スマートブロック」「アクティビティ インサイト」といった機械学習技術を活用した機能を紹介していただきましたが、その他、最新バージョンで注力した点や注目してほしいポイントはどこですか?
ハッサン氏 まず、パフォーマンス向上に対する取り組みが挙げられる。オートデスクは、ユーザーの声に耳を傾けながら長年継続的にAutoCADのパフォーマンス向上に注力してきた。例えば、毎日多数の設計データを取り扱っている設計現場では、レイアウトタブの切り替えが頻繁に行われている。最新バージョンのAutoCAD 2024では、「AutoCAD 2023」と比べてレイアウトタブ間の切り替えスピードが約9倍高速化されている。
その他にも、2D/3Dのグラフィックス性能の改善、保存や終了、インストールのようなよく使われる機能やコマンドに関してもパフォーマンスが向上している。こうした地道な取り組みが、顧客やユーザーからの信頼獲得にもつながっていると自負している。
また、オートデスクはハイブリッドワークなど、多様な働き方の実現を視野に、クラウドへの投資を積極的に行っている。先ほども紹介したAutoCAD Webは、AutoCAD 2024およびAutoCAD Plus 2024のサブスクリプションに含まれ、AutoCADのWebアプリとモバイルアプリを利用でき、クロスプラットフォームでの柔軟な働き方に貢献する。
同じく、AutoCAD 2024およびAutoCAD Plus 2024のサブスクリプションに含まれる「AutoCAD 2024 for Mac」は、Macユーザー待望のApple Mシリーズチップに対応したAutoCAD環境となる。全体的なパフォーマンスが「AutoCAD 2023 for Mac」と比較して最大2倍向上しており、設計業務の効率化や生産性の向上に寄与する。
成熟したCAD業界におけるオートデスク、「AutoCAD」の優位性は?
――競合他社のCADツールも進化を遂げつつあり、業界全体でCADそのものの完成度がある種“横並び”になってきたと感じています。そうした中で、オートデスクおよびAutoCADの優位性はどこにありますか?
ハッサン氏 既に説明してきた通り、AutoCADは機械学習をはじめとするテクノロジーの力でユーザー要求に応え、設計業務の効率化や自動化を可能としてきた。パフォーマンスの向上についても長年継続的に取り組んできたと自負している。こうした強みの他にも、セキュリティやプライバシーへの配慮など、信頼できるツールとして求められる機能を追加してきた。
さらに、AutoCADはオートデスクのその他のソリューションやサービスはもちろんのこと、他社ツールのデータとの連携/互換性も有しており、ソリューションとしての接続性、拡張性、オープン性にも強みを持つ。このように、われわれはユーザーにとって最も使いやすい、最も使い勝手の良いソフトウェアソリューションを、プロジェクトライフサイクル全体にわたって常に提供し続けてきた。
また、エコシステムの観点では、オートデスクはAnsysやSchneider Electricといった、さまざまな業界のリーダー企業との戦略的提携、パートナーシップを実現しており、顧客企業のビジネスの成功を強力に後押ししている。
そうした中でも、日本は重要な市場の1つだと認識している。われわれは、常に日本の市場トレンドに注視しつつ、必要なものを必要に応じて製品やサービスに反映させている。
日本企業は最新テクノロジーの採用にとても慎重だが、AutoCADは、今まで通り2D設計で利用するユーザーはもちろんのこと、3D設計、さらにはクラウドを活用した信頼できる唯一の情報源(SSOT:Single Source of Truth)に基づく、“クラウドインフォメーションモデリング”を実践しようとする先進ユーザーにとっても、最大限の恩恵を受けることができるCADソフトウェアだ。
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