EVの走行距離倍増、PHEVはモーター走行200km……トヨタ新体制が方針:電動化(2/2 ページ)
トヨタ自動車は新体制での経営方針を発表した。社長に就任した佐藤恒治氏、副社長の中嶋裕樹氏と宮崎洋一氏が出席し、電動化の計画や「モビリティカンパニー」を目指す変革などについて説明した。
トヨタ自動車が目指すモビリティ社会の在り方とは
マルチパスウェイの全方位での取り組みにより、全世界で販売するクルマの平均CO2排出量は2019年比で2030年には33%、2035年には50%の削減を目指す。まずはすぐできる電動化で足元から着実にCO2を減らす。新興国も含めてHEVの販売を強化するとともに、PHEVの選択肢やEVのラインアップも拡充する。
マルチパスウェイの背景には、「いいクルマの定義は1つではない。ユーザーの嗜好も多様化している。ある特定の価値をユーザーに押し付けるのではなく、多様化するニーズに応えられる量産を大切にしなければならない」(社長の佐藤氏)との思いもある。
水素を使う領域の拡大や、カーボンニュートラル燃料の活用も推進する。水や廃棄物から作った水素や、バイオマスなどから作ったカーボンニュートラル燃料を使用した実証実験は日本やタイで既に始まっている。そのエネルギーを活用する技術をモータースポーツの現場でも鍛え、普及につなげていくとしている。
電動化だけでなく、クルマの知能化や多様化の領域でも進化させていくことで、モビリティカンパニーへの変革を目指す。変革の中心にはあくまでクルマがある、との考えだ。実証と検証のサイクルを多く回していくことを重視する。
トヨタ自動車が目指すモビリティ社会の在り方についてまとめた「トヨタモビリティコンセプト」についても会見で説明した。第1段階では、EVを電気を運ぶモビリティとして活用したり、クルマやユーザーから集まる情報を生かしてクルマを進化させたりする。また、ハードウェアとソフトウェアがつながることで、さまざまなアプリケーションと連携しやすくする。ここでアリーンが重要な役割を担うとしている。
第2段階では、今のトヨタ自動車の事業範囲を超えて移動を支える。高齢者、過疎地に暮らす人々、自動車市場が成熟していない新興国などがターゲットだ。空のモビリティや、「イーパレット」のような新しいモビリティ、MaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)など、産業を超えた連携を生かす。
第3段階では、エネルギーや交通システム、物流、暮らしの在り方まで一体となるモビリティのエコシステムを構築する。ウーブンシティーの実証実験を活用しながら、社会実装につなげていく。
知能化に関しては、時代や進化に合わせた安全技術やマルチメディアのアップデートを全てのクルマに順次広げる。2026年に投入する次世代EVでは、走る/曲がる/止まるにこだわった「乗り味」のカスタマイズも実現する。クルマの素性も磨き、ハードウェアとソフトウェアの両面で運転の楽しさをかなえる。
サービスの知能化では、リアルタイムの交通情報を活用して輸送効率を高める物流システムや最適なエネルギーマネジメントを行うシステムなどを2023年から社会実装を始める。充電ネットワークの拡充や社会に貢献するエネルギーグリッドなど暮らしにかかわるサービスも提供するとしている。
より幅広く移動を支えるに当たっては、福祉車両の開発で培ったノウハウを生かしてワンタッチで車いすを固定できる装置を開発。2023年から実装を開始し、陸海空全てのモビリティに普及させる。
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