エレベーターで緊急事態に直面した配送ロボの行動パターンを実験:ロボット開発ニュース
戸田建設、ZMP、日立ビルシステムの3社は、茨城県つくば市の戸田建設 技術研究所で、ロボットが建物の内外を自由に人と一緒に移動できる環境の実現を目指した実験を行った。
戸田建設、ZMP、日立ビルシステムの3社は2023年4月6日、茨城県つくば市の戸田建設 技術研究所で、「つくばロボット実証実験お披露目会」を開いた。
デリロで「通常系」と「異常系」の行動パターンを実施
今回の実験では、ロボットが建物の内外を自由に人と一緒に移動できる環境の実現を目指して、「ウェーブガイドLANシステム(WGLS)」を使用し、建物の内外で同じWi-Fi電波をシームレスに、ロボットと接続することで、人と共生可能なロボットフレンドリーな環境を構築した。
WGLSは、建設現場の一般的な資材である単管パイプを導波管として利用し、高層建物の各階に有線LANケーブルを敷設することなく、快適な通信環境を構築できる。特徴は、エレベーターシャフト内に設置することで、内部に安定して電波を供給可能な他、アクセスポイント1台で10フロアに電波を送れ、新築と既設に対応する点だ。
戸田建設 イノベーション本部 イノベーション推進統括部 新事業・事業化推進部 部長の黒瀬義機氏は、「WGLSは、建物の施工期間中にWi-Fi環境の構築に活用し、完成後に、建物の内外でロボットを移動させるのに使える」と話す。
会場では、WGLSを構造・施工実験棟のエレベーターに備えて、エレベーターを利用した移動で、ZMP製の配送ロボット「デリロ」に「通常系」と「異常系」の行動パターンもとらせた。通常系では、デリロに、技術研究所の本館棟前で荷物を受け取らせ、屋外から構造・施工実験棟に入らせた後、エレベーターに人と同乗させて建物の3階に荷物を運ばせた。
異常系では停電や火災を想定した5つの行動パターンを実施
異常系では、地震や火災、停電などの緊急事態に、デリロとエレベーターが危険な動作をしないことを目的に、5つの行動パターンを制御した。1つ目は、エレベーター内のプログラマブルロジックコントローラー(PLC)に意図的に緊急事態を検知させ、WGLSを介して、デリロに指令を送るクラウド上のロボットサーバへ通知し、ロボットサーバのモードを、非常時の指令を送信可能な緊急モードに切り替えられるかを調べた。
2つ目は、デリロがエレベーターに乗る直前に地震が発生した場合を想定して、デリロにエレベーターへの乗り込みを中止させ待機させるとともに、エレベーターを避難階で休止させ、乗客やデリロ、エレベーターに事故が起きないことを目指した。
まず、デリロが建物3階のエレベーターに乗車途中に、意図的にエレベーター内のPLCに緊急事態を検知させ、エレベーターを避難階に移動させ待機させた。次に、WGLSを介して、クラウド上のロボットサーバへも緊急事態を通知し、緊急モードに切り替え、ロボットサーバの指令で、デリロを安全な場所に避難させ休止した。
その後、緊急事態の解除をPLCに認識させ、エレベーターを通常運転とし、クラウド上のロボットサーバへ通知し、ロボットサーバを通して、デリロの休止を解除した。
3つ目は、デリロがエレベーターから降車中に火災が起きたケースを想定し、呼び出し階でデリロを降ろし、火災しているフロアにエレベーターが移動しないために避難階まで動かし待機させ、エレベーターや乗客の安全を確保できるかを確かめた。
作業手順は、デリロが建物1階のエレベーターで降車中に、意図的にエレベーター内のPLCに緊急事態を検知させ、エレベーターを避難階に移動させ待機させた。WGLSを介して、クラウド上のロボットサーバへも緊急事態を通知し、緊急モードに切り替え、ロボットサーバの指令で、デリロを安全な場所に避難させ休止した。
一定の時間を置いて、緊急事態の解除をPLCに認識させ、エレベーターを通常運転とし、クラウド上のロボットサーバへも緊急事態の解除を通知し、ロボットサーバを通して、デリロの休止を解除した。
4つ目は、デリロが乗ったエレベーターが呼び出し階に移動中に停電が発生したケースを想定し、呼び出し階でエレベーターを一旦休止させるとともに、危ない行動をとらないようにデリロを休止させた後、エレベーターを避難階に移動し、乗客やデリロ、エレベーターの安全を確保可能かを検証した。
現地では、デリロが建物1階のエレベーターに乗車中に、意図的にエレベーター内のPLCに緊急事態を検知させ、呼び出し階でエレベーターを待機させた。次に、WGLSを通して、クラウド上のロボットサーバへ通知し、緊急モードに切り替え、ロボットサーバの指令で、デリロを休止した後、エレベーターを避難階に動かし待機させた。
続いて、緊急事態の解除をPLCに認識させ、エレベーターを通常運転とし、ドアを開けさせた。クラウド上のロボットサーバへも緊急事態の解除を通知し、ロボットサーバを通して、デリロの休止を解除し、エレベーターの外に移動させ、オペレーターがデリロに異常がないことを確かめた。
5つ目は、エレベーターに乗る前にデリロの機体に異常事態が発生した場合を想定し、異常事態が起きたデリロが建物内で危険な行動を行わないように、エレベーターに乗り込ませ、エレベーターで指定のフロアに移動させ、待機させた後、オペレーターがそのフロアでデリロの異常事態を解消できるかを確認した。
当日は、デリロのLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)センサーに帽子をかぶせ、エレベーターに乗り込ませた。デリロのLiDARセンサーで異常事態が起きたことをロボットサーバが認識し、緊急モードに切り替わり、デリロを休止し、エレベーター内のPLCに通知した。そして、緊急事態を認識したPLCがエレベーターを指定階に移動させ待機させた。
続けて、オペレーターが指定階でPLCを操作しエレベーターを通常運転とし、ドアを開けて、手動操作でエレベーター外にデリロを移動して、デリロの緊急事態を解消した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- エレベーターとロボットのクラウドを用いた連携に成功
日本オーチス・エレベータとZMPは、エレベーターとロボットのクラウドを用いた連携に成功した。ロボットが人の手を介さずにエレベーターを呼び、目的地を選択して、ビル内を垂直に移動できることを確認した。 - あらゆる搬送シーンに対応するAGV、SLAMなど3つの走行方式を併用で
ZMPは2020年8月19日、AGVの走行方式であるライントレース、SLAM、ランドマーク(シール)読み取りの3つ方式の特徴を兼ね備える走行方式「Hybrid SLAM」を開発したと発表した。狭い通路や停止精度が要求される場所など、搬送シーンに応じて走行方式を柔軟に切り替えられる点が強みだ。 - 5cm未満の超至近距離にある物体も検出、ZMPが中国メーカーのLiDAR販売
ZMPはRoboSenseが開発した3D-LiDAR「RS-Bpearl」を販売開始すると発表した。最短計測距離は5cm未満で、他のLiDARと比較すると近傍の障害物を検出しやすい点が特徴。 - ケータイで動くロボット兵?――ZMP、“50万円ヒューマノイド”発表
PINOのロボットビジネスが好調なZMPが、2足歩行ロボット「nuvo(ぬーボー)」を開発。今年末には量産タイプを50万円程度で発売するという。いよいよ一般ユーザーにも手が届きそうな“ロボット兵”似のヒューマノイドとは? - ZMP、地震の揺れを多角的に計測するアプリ無償配布
ZMPは、9軸ワイヤレスモーションセンサ&SDK「e-nuvo IMU-Z」の利用者に対し、地震の揺れを多角的に計測するアプリを無償配布すると発表した - LiDARやソフトをパッケージ化、ZMPの自動運転開発者向けセンサーユニット
ZMPは2020年8月20日、年次イベント「ZMP World 2020」で、LiDARなどのセンサー群とソフトウェア、アプリケーションなどをオールインワンパッケージ化した自動運転車両開発者向け「ZMPセンサーユニット」を開発したと発表。同ユニットのセンサーはキャリブレーション済みで、自動運転車両に必要なソフトウェアもインストールされている。自動運転車両開発者の作業工程効率化に寄与する。