EV関連投資や自動化ニーズで製造業向けロボット市場は成長、2027年には2兆円規模に:FAニュース(2/2 ページ)
富士経済は製造業向けロボットの世界市場に関する調査結果を発表した。
半導体、電子部品実装向けや協働ロボットの世界市場
半導体、電子部品実装向けロボットは、2022年が中国におけるスマートフォン市場の減速の影響が大きく、市場規模は7536億円で前年比7.4%減となった。特に、電子部品実装向けが大きく伸びた前年からの反動や部材不足の長期化を受けて、需要が落ち込んだ。
2023年もスマートフォン関連の設備投資は抑えられるため、市場は縮小が続くとみられる。中期的には、EVや自動運転の普及に伴う車載電装品の伸びや、5G関連の基地局やサーバといったネットワーク機器関連の需要が増加するため、高速モジュラーマウンターやフリップチップボンダーなどの伸びが期待され、市場拡大が予想される。2027年の市場規模は2022年比で23.1%増の9279億円と見込んだ。
協働ロボットは2022年、製品の認知度や活用方法がユーザーに浸透してきたことや、上位メーカーの大幅な実績増により、市場規模は2021年比28.3%増の1132億円となった。特に、可搬重量20kg〜25kg前後の製品では、パレタイジング用途で人からの置き換えが進み、参入メーカーがラインアップを拡充したことから、市場拡大につながった。
今後は、ハンドリングや検査工程だけでなく、安全柵を用いないパレタイジングなどの用途もさらに普及するとみられる。中国メーカーなど、参入メーカーの増加による選択肢の広がりや、人件費の高騰、自動化、省人化ニーズが高まっているASEANなどでの伸びも予想され、2027年の市場規模は2022年比で2.6倍の2889億円への拡大を予測した。
EV関連投資が多関節ロボットやリニア搬送システムをけん引
可搬重量21kg以上で特定用途に特化しない垂直多関節ロボットは2022年、EV関連の設備投資が活況となり、パレタイジング向けに可搬重量25kg前後、車載バッテリー向けに可搬重量50kg以上のロボットの需要が高まったため、中国や米州を中心に市場は拡大した。2021年比で18.3%増の3593億円の市場規模となった。
2023年は、EV関連では引き続き伸びが期待されるが、それ以外の電機、電子関連などで設備投資が縮小しているため、市場は微増にとどまるとみられる。今後は、自動車関連以外への採用開拓を進めることで、さらなる市場拡大が期待されることから、2027年の市場規模は2022年比で38.9%増の4992億円と予想した。
リニアモーターとスライダー、コントローラーなどで構成され、生産ラインの中で対象製品を高速かつ高精度に搬送するリニア搬送システムは2022年、電子部品など部材不足の影響がみられたが、高速かつ高精度で低発じんな搬送が実現できることや、レイアウト変更が容易で自由度の高い生産ライン構築が可能なことから、自動車部品や車載バッテリー、電子部品などの組み立てや搬送工程への普及が進んだ。
また、柔軟な生産ラインへの対応は、多品種少量生産の多い三品業界でも需要増加につながっており、2022年の市場規模は2021年比で10%増の22億円となった。今後は、EV関連の設備投資増加や、三品業界の需要増加を背景に市場が大きく拡大するとみられ、2027年の市場規模は2022年比で3.1倍の68億円になると見る。
FA関連装置に使用される可動用や動力供給用、通信制御用のケーブルを対象するFAケーブル市場は2022年、EV関連の設備投資増加を背景に製造業ロボット向けが伸長した。半導体不足の解消に向けて半導体製造装置向けのウエハー搬送ロボットの需要が増加し、使用されるケーブルが増加したことから、2022年の市場規模は2021年比で16.8%増の222億円へ拡大した。
2023年は、引き続きEV関連の製造業ロボット向けで引き合いが増加するものの、スマートフォン関連やウエハー搬送ロボットの受注の勢いが弱まっているため、市場は微増にとどまるとみられる。中長期的には、製造業ロボット向けの伸びに伴い、市場拡大が予想され、2027年には2022年比で26.1%増の280億円に広がるとした。
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