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水平分業での日本の製造業の戦い方と製造業プラットフォーム戦略の考え方インダストリー5.0と製造業プラットフォーム戦略(4)(4/5 ページ)

インダストリー4.0に象徴されるデジタル技術を基盤としたデータによる変革は、製造業に大きな変化をもたらしつつある。本連載では、これらを土台とした「インダストリー5.0」の世界でもたらされる製造業の構造変化と取りうる戦略について解説する。第4回は、デジタル化による水平分業で日本の製造業が生かせる強みと、新たな競争力を担保する「製造業プラットフォーム戦略」について紹介する。

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VAIOが示したものづくりプラットフォーム展開

 VAIOはソニーのPC事業が2014年に投資ファンドの日本産業パートナーズに譲渡されることに伴い設立された企業である。ソニー時代からのモノづくりノウハウを生かして自社のPC製品の開発と製造だけではなく、他社のモノづくりを支援するEMS事業を展開している。同社のEMS事業においては「企画、設計、試作、調達、実装、製造、品質保証、出荷、マーケティング、営業、アフターサービス」まで、モノづくり企業のプロセスをトータルで支援できることが特徴だ。

 特に、同社が強みを持つロボットについては注力領域としている。ロボットに必要なハードウェアの開発と製造、AIを含むソフトウェア技術などをパッケージとして支援しているのだ。ソニー時代の自律型エンタテインメントロボット「aibo」の製造ノウハウなども生かし、トヨタ自動車や富士ソフト、バンダイなどからロボットの製造を受託している。EMS事業を通じてモノづくり企業に広く支援を行うとともに、ロボット領域においては標準化なども進めながら先進の技術を提供しており、「広さ」と「深さ」の両輪を回していることが、VAIOのモノづくりプラットフォーム展開において興味深い点である。

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図6:VAIOにおけるものづくりプラットフォーム戦略[クリックで拡大] 出所:筆者著書「製造業プラットフォーム戦略」より

浜野製作所によるものづくりプラットフォーム展開

 浜野製作所は墨田区の金属加工企業であり、特定顧客への量産対応から、多品種少量の試作支援や顧客の装置開発などへ事業の中心を大きく転換した企業である。その象徴となっているのがモノづくりインキュベーション拠点「ガレージスミダ(Garage Sumida)」だ。

 ガレージスミダでは、設計から加工、組み立てまでを一貫で実施できる工作機械などの設備やインフラを用意するとともに、開発支援、共同企画開発、技術コンサルティングなどの各種支援を行っている。浜野製作所がこれまで培ってきたモノづくりのノウハウを併せて提供することで、ハードウェアスタートアップがアイデアから実際の製品の形に落とし込む際にぶつかる壁を乗り越える支援を行う。

 既に、グローバルに展開が進んでいるパーソナルモビリティのWHILLや、コミュニケーションロボット「OriHime」を展開するオリイ研究所、自動野菜収穫ロボットのinaho、ロボットのアスラテックなどの多くのスタートアップがガレージスミダを通じて成長している。ガレージスミダ自体がビジネスとして収益源になっているとともに、これらの企業が成長することで得られる新たなモノづくり支援への広がりや認知度なども浜野製作所本体の成長に貢献している。自社が対応できる技術領域が拡大し、新規事業創出や、既存事業の高度化につながっているのだ。

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図7:浜野製作所におけるものづくりプラットフォーム戦略[クリックで拡大] 出所:筆者著書「製造業プラットフォーム戦略」より

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