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「現場改善の定量化」で工場に携わる誰もが経営実践者になれる現場改善を定量化する分析手法とは(1)(1/3 ページ)

工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第1回は、連載の狙いを紹介するとともに、レイアウト計画を行うSLP法を実践するためのPQ分析法と工程分析法について解説する。

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 筆者の福田祐二氏は、これまでもMONOistで方法改善や品質管理、原価低減、標準時間、工程管理、設備管理などをテーマとする解説記事を多数執筆してきました。今回から始まる新たな連載のテーマは、「現場改善を定量化する分析手法」です。(MONOist編集部)



1.本連載の狙い

1.1 「経営実践者」としての自覚を持つ

 新連載を始めるに当たって、製造業の経営目的についてあらためて考えてみたいと思います。製造現場に携わる管理監督者はもちろん、スタッフも含めて、自らが担当する生産現場の「経営実践者」でなければなりません。経営実践者は、経営者に代って、工場運営において顧客の期待に応えていくために重視すべき、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)、いわゆる「良いものを、安く、速く造る」という3つの面で、国際的に見て常に他社よりも優位に立つための施策を講じられる人でなければなりません。経営実践者は、これら3つの経営目標を達成するために、実行計画を立案し、部下はもちろんのこと、スタッフや上長、他職場の協力を引き出せる能力を発揮しなければならないのです。

 3つの経営目標について、科学的思考に基づいて立案された、かなり周到で綿密な計画が計画通りに実行されれば当初の目標が達成できるはずです。しかし、計画が予定通り実行できないということが毎日のごとく起こり、何らかの不具合が発生してしまいます。これらの課題や問題点の解決に向けて、創造力を発揮しながら果敢に取り組んでいかなければなりません。

 また、生産現場は経営目標の「良いもの(Q)を安く(C)速く(D)造る」を達成するために、「生産の3要素(3M)」の人(Man)が生産設備(Machine)を使って、原材料や部品(Material)に加工を加えながら製品としてまとめ上げていくところです。人は、一人として同じ能力を持った人はいませんし、性格も異なります。生産設備は故障します。原材料や部品もその調達が遅延したり、余分にたまり過ぎたりもします。このように、生産の3要素は、毎日めまぐるしく変化していますので決して毎日が同じではありません。計画通りに生産できない最大の原因がここに潜んでいます。

 毎日変化するこれらの生産の3要素を最先端に位置して指揮を執っているのが第一線の製造現場に携わる管理監督者であり、スタッフですから、これら生産3要素の変化に機敏に対応して臨機応変の行動がとれなければ、経営目標(Q、C、D)は達成できないことになります。

 つまり、経営実践者は、経営者に代わって、月々の実行計画を確実に達成しなければならないことは前述しましたが、そのために責任領域の生産の3要素(3M)を自分の思い通りに駆使できる能力を持っていなければならないのです。これが、経営実践者に要求される役割です。本連載は、3つの経営目標(Q、C、D)を達成するために必要な現場改善の考え方、改善前後の状態を数値化することで科学的アプローチを可能にする手法を学習します。専門的な技法の基本をしっかり身につけて経営実践者として、経営目標の達成にお役立て頂くことを期待しています。

1.2 経営目標(Q、C、D)の達成に際して

 本連載は、経営実践者として経営目標を高い水準で達成するために生産現場で改善を行うとき、いつも傍らにおいて参照してもらうためにまとめた分析手法集となります。

 改善を行う場合は、現状や改善後の成果を評価するために必ず分析手法を使用して定量化しなければなりません。改善は最初に問題ありきで、その問題の実態を顕在化させるのが分析手法です。分析手法というと小難しい話に聞こえてしまいますが、現場の問題を把握したり、評価したりするための手段はたくさんあって、そのほとんどは慣れてしまえば誰でも容易に使えるものです。本連載で示す手法は、まさにそうした便利かつ有効な手法ですので特定の専門家しか使えないというものはほとんどありません。

 本連載で取り上げる分析手法は、その全てを知る必要はありませんが、最近の製造業において発生している新しい問題なども勘案して、改善対象別に手法を分けてこれだけは知っておいてほしいと思われるものを選択したつもりです。いずれも製造業においては定石的な現場向きの手法です。特に、長い期間にわたって活用されてきた手法については、それ故に価値ある手法としてクローズアップして紹介します。

 このような分析手法集は「この問題ならこの方法で調べてみよう、データをとってみよう」といった、目的と手法をマッチングさせる時に便利です。適切な手法を選択することは現場では大切なことであり、そうしたいわば現場力をつける意味でも活用してもらいたいと思います。最近、現場で現状分析などに携わっている人たちが定石的な分析手法すら知らないということをよく耳にするようになってきました。意外に思われることかも知れませんが、総合的な現場力が低下しているのではないかと危惧しています。例えば、粘り強く定量化して問題を把握するというアプローチは、新しい問題に対して必須です。ところが現場では、このような力はむしろ弱体化しているといっても過言ではありません。

 問題を分析したり評価したりする手法は、強い現場力を支える最も基本的なものです。この力を低下させないようにしなければなりません。本シリーズのような分析手法集が経営実践者の手法として少しでも役立てていただければと思います。

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