ニュース
プラスチックの劣化をX線散乱と近赤外光吸収から分析する新たなシステム:研究開発の最前線
産業技術総合研究所は、プラスチックの劣化状態を、X線散乱と近赤外光吸収の同時計測により分析するシステムを開発した。劣化により破壊や変形が生じたプラスチックを、形状や厚みにかかわらず、非破壊で検査できる。
産業技術総合研究所は2023年2月28日、プラスチックの劣化状態をX線散乱と近赤外光吸収の同時計測により分析するシステムを開発したと発表した。劣化により破壊や変形が生じたプラスチックを、形状や厚みにかかわらず、非破壊で検査できる。
同システムは、X線で結晶の厚みの増加を、近赤外光で高分子鎖のらせん形状の変化を検出し、2つのデータを組み合わせて、プラスチックの結晶構造を分析する。同一部位を2種の手法を用いて測定することで、より精密な分析が可能となった。
劣化したポリプロピレンの構造解析では、X線散乱のデータから結晶の厚みや結晶構造の量が増えたと判明し、近赤外光の吸収データからは結晶部の高分子鎖が形成するらせんの増加が示された。2つの測定データから、ポリプロピレンは劣化により、結晶構造内部の高分子鎖が多くのらせんを形成して結晶の厚みが増え、柔軟で変形に強い非晶構造が減り、壊れやすくなるという仕組みが解明された。
同研究所は、劣化現象を解明する新しいツールとして、劣化しにくいプラスチックの設計に活用する考えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 日立と産総研が“強者連合”、日本発でサーキュラーエコノミー技術を発信へ
日立製作所と産業技術総合研究所は、産総研臨海副都心センター(東京都江東区)内に「日立−産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」を設立した。同連携研究ラボには、日立から約20人と産総研から約20人、合計約40人の研究者が参加し、2025年10月10日までの3年間で10億円を投じる計画である。 - 素材・化学で「どう作るか」を高度化する共同研究拠点、産総研が3カ所で整備
産業技術総合研究所(以下、産総研)の材料・化学領域では2021年6月23日、マテリアル・プロセスイノベーションプラットフォームの整備を開始したと発表した。 - CNFの応用開発と普及を後押し、NEDOと産総研が安全性評価書を公開
NEDOと産総研は、2020年から進めてきた「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」の一環として、セルロースナノファイバー(CNF)を取り扱う事業者の自主安全管理や用途開発の支援を目的とする文書「セルロースナノファイバーの安全性評価書」を公開した。 - 産総研が水蒸気を含むガスからメタノールの回収と濃縮が可能な吸着材を開発
産業技術総合研究所は、水蒸気を含むガスからメタノールの回収と濃縮が可能な吸着材を、青色顔料として使われるプルシアンブルーの改良により開発した。回収したメタノールは、資源として再利用できる。 - それは究極を超えた至高の黒、産総研が可視光吸収率99.98%の暗黒シートを開発
産業技術総合研究所(AIST)が、新たに開発した可視光を99.98%以上吸収する「至高の暗黒シート」について説明。これまでの「究極の暗黒シート」と比べて、半球反射率を20分の1以上まで削減しており、究極を超えた至高の黒さを実現した。 - 生命科学の匠の技をAIとロボットで伝承、産業化の促進を目指す
エピストラは神戸市役所(兵庫県神戸市)及びオンラインで記者会見を開き、ロボットやAIを活用した再生医療の実験効率化の成果について報告した。