人の優しさ引き出す“弱いロボット”、パナソニックが一般販売開始へ:ロボット開発ニュース
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションは“弱いロボット”をコンセプトとするコミュニケーションロボット「NICOBO」の一般予約販売の受け付けを開始した。
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションは2023年3月7日、「弱いロボット」をコンセプトに開発したコミュニケーションロボット「NICOBO(ニコボ)」の一般予約販売の受け付けを開始した。発売日は同年5月16日を予定する。
“おなら”もするロボット
NICOBOは「人の心を豊かにしたい」という思いに基づき、2017年に開発プロジェクトがスタートしたロボットだ。2021年にMakuakeでクラウドファンディングを実施したところ、応募受付開始から数時間で目標支援金額の1000万円を達成した。
突起部(しっぽ)を含めない本体のサイズは228mm×176×236mm、重量は約1.5kg。駆動時間は約3.5〜4.5時間で、充電時間は約4〜7時間となっている。カラーバリエーションは「ストーングレー」「スモークネイビー」「シェルピンク」の3パターン。
NICOBOの本体価格は6万500円(税込み)で、機能アップデートのサービスなどを提供するベーシックプランが1100円(同)。さらにNICOBOの修理やメンテナンスを行うカスタマーサービス「NICOBO CLINIC」も提供する。サービス内容はNICOBOの可動部の不調などを修理する「NICOBO治療サービス」、不良箇所の有無を診断する「NICOBO ドックサービス」と「ニット交換サービス」の3種類となっている。「NICOBO ケアプラン」(月額550円)に加入している場合はこれらのサービスの利用料金を一定程度削減できる。
NICOBOは、なでると喜んでしっぽを振るなどのしぐさを見せる。機嫌が悪いと尻尾を振らないこともあるといい、「自分のペースを大切にしたのんびり屋さん」(パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション NICOBO プロジェクトリーダーの増田陽一郎氏)だという。
この他にも寝言を言う、“おなら”をするといったしぐさも見せる。NICOBO特有の「モコ語」という気持ちを表す言葉に加えて、たまに片言の日本語を覚えて話すことがある。これらの対話機能にはNICOBOにはパナソニックグループが特許を取得した、音声認識向上のためのさまざまなノイズ除去技術が生かされている。例えば、NICOBOの発話した音声をキャンセルするエコーキャンセル技術や、空調などの定常ノイズを低減するノイズサプレッサー技術、特定の方向へマイク感度を上げるビームフォーミング技術、内蔵するサーボモーターのノイズを抑圧するメカノイズ抑圧技術などだ。
頼りないけど放っておけないロボット
NICOBOの開発コンセプトの中核には、豊橋技術科学大学 教授の岡田美智男氏が提唱する「弱いロボット」というアイデアがある。ロボットの不完全な面をあえて隠さないことで、その“弱さ”を感じた人間がロボットを手助けするなど積極的に関わりたくなるような関係の構築を目指す。
こうしたアイデアに基づき、岡田氏は過去に「ごみ箱ロボット」を開発した。ごみを集めるロボットだが、そのためのアームなどが備わっておらず、ごみを発見しても自力では拾えない。動作もよたよたとして頼りないが、こうした振る舞いが手助けをしたいという気持ちを人間に起こさせる。
増田氏は「弱いロボットは自然と人の優しさや思いやりを引き出す。手助けをした人も悪い気はせず、むしろ手伝うことで気分が良くなっていることに気付く」と説明する。NICOBOでもこうした人間とロボットの関係を意識して、「ちょっと頼りなくて放っておけないロボット」を目指しているという。
増田氏は「NICOBOと暮らしてもらった人を対象とした当社の調査では、ロボットのちょっとしたしぐさなどで『笑うことが増えた』というような意見を聞くことがあった。単に癒されるというだけではなく、笑顔や笑いを提供できるようなロボットにしていきたい」と語った。
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