パナソニックが“コケ”でこんもり覆われた6足歩行ロボットを作った理由:イノベーションのレシピ(1/2 ページ)
パナソニックは2021年7月6日、同社のロボティクス技術などを活用して「Aug Lab」の2020年度成果発表会を開催した。“コケ”で装飾された6足歩行ロボット「UMOS」など、動植物との共生をテーマとした作品を発表した。
パナソニックは2021年7月6日、同社のロボティクス技術などを活用して「Aug Lab」の2020年度成果発表会を開催した。“コケ”で装飾された6足歩行ロボット「UMOS(ウモズ)」など、動植物との共生をテーマとした作品を発表した。
【訂正】記事公開当初、UMOSの足の本数を誤って表記しておりました。現在は修正済みです。
今回発表した作品群は、パナソニックセンター東京(東京都江東区)内に開設した子ども向けのSTEAM教育(※)施設、「AkeruE」で2021年9月末まで展示する予定。
※Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)といった教育分野の総称。
「人間の心」を拡張する技術を開発
Aug Labは「人の拡張(Augmentation)」を実現する技術(拡張技術)開発を主眼に置き、実験的な取り組みを行うパナソニック内の研究チームである。メンバーはエンジニアやデザイナー、経営企画系の人員など現在10人程度で、この他に社外の有識者などが参加する。
拡張技術は義手や義足、パワーアシストスーツなど人間の持つ身体能力や感覚を技術によって強化、鋭敏化する取り組みの総称である。中でもAug Labが注力しているのが、「人間の心や感性」を引き出すハードウェア、ソフトウェア技術の開発である。技術開発を通じて作品を制作し、作品を見た人に「何気ない日常の中にウェルビーイングを見いだす」(パナソニック)体験をしてもらうことを目指す。これまでに、部屋の外を流れる風に反応して不規則な揺らぎを空間内に表現する「TOU - ゆらぎかべ」や3体1セットのコミュニケーションロボット「babypapa(ベビパパ)」などを開発してきた。
コケで覆われた6足歩行ロボット
発表会ではAug Labにおける2020年度の開発成果物として、作品の素材にコケを用いたロボット「UMOS」と照明用インタフェース「MOS Interface」、ミスト(霧)の動きの変化を可視化するインスタレーション・アート(空間全体を体験するアート)の「Waft(ワフト)」を紹介した。UMOSとMOS Interfaceは、ロフトワークが展開中の、素材メーカーのイノベーションを支援するプラットフォーム「MTRL(マテリアル)」と共同で開発した作品である。
UMOSは半球状の本体上部や脚部周辺にコケを設置した6足歩行のロボット作品だ。コケの下に照度センサーや湿度センサーを搭載しており、これらのセンシング結果に応じて歩行方向を決めるアルゴリズムを実装している。
設置するコケはヤマゴケとスナゴケの2種類があり、コケの種類に応じてロボットの行動パターンも変化する。例えばスナゴケは日光を好むという性質があるため、スナゴケを設置したロボットは光源の方向に進むというアルゴリズムを実装した。反対にヤマゴケは比較的湿度の高い環境を好むことから、霧吹きなどで水をかけられた方向に進む。
当初は車輪の搭載も検討したが、「足だけでぎこちなく移動する方が、ロボット自体のかわいらしさやコケの生命感を良く表現できる」(安藤氏)として見送った経緯があるという。
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