PLMとBOMの基礎知識(2):PLMの進化の歴史を振り返ろう:DX時代のPLM/BOM導入(11)(3/3 ページ)
本連載では製造業DXの成否において重要な鍵を握るPLM/BOMを中心に、DXと従来型IT導入における違いや、DX時代のPLM/BOM導入はいかにあるべきかを考察していく。第11回は、PLMに求められる機能の歴史を解説する。
PLMでもAI活用が進む?
2010年以降にどう変化したのか、いくつか例をご紹介いただけませんか?
ドキュメント管理の機能は効果も出やすいので、多くの企業が全社レベルで導入しています。国内だけではなく海外拠点も巻き込んだスコープに設定することが多いです。ただ、その際にはドキュメント管理の運用ルールを全社で整合する必要があります。例えば、ドキュメント名称や承認ワークフロー、参照や更新のアクセス権などですね。
全社レベルで整合性を持たせようとすると、コンフリクト(部門間の意見の違い)が発生することもあります。システム導入以前に、経営幹部を巻き込んだDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトとして体制を整備する必要があるでしょうね。
それ以外には、工程管理(BOP)や製造変更管理、プロジェクト管理(製品開発計画の変更管理含む)などが自動車業界の品質規格対応をきっかけに広まりました。背景には2010年以降多発したメガリコールに伴う、トレーサビリティー強化対策(不具合発生要因の特定プロセスの強化)があります。
なるほど、産業界の動向に応じて日々変化しているのですね! 今後はどう進化していくのでしょう?
ははは、難しい質問ですね(笑)。1つの予想としては、AI(人工知能)活用がPLMの分野でも進展する可能性があります。例えば、ほとんどの企業は2次元の図面情報を技術資産として多く保有していますが、その活用は十分とはいえません。図面上の情報をAIが抽出し、情報を解析してSCM(サプライチェーンマネジメント)やその他のプロセスに利用するのです。
私もこれまで図面活用の依頼を受けたことがありますが、図面情報解析技術の向上などテクノロジーの進化と、PLMシステムは新しい価値を創出できる可能性を秘めていると思います。
PLMでのAI活用は楽しみですね! それと、実は上司に鹿追先生から他企業の失敗事例を聞き出すように指示されているんです(笑)。次回は、PLMやDXのプロジェクトで「うまくいかなかった例」を教えていただけませんか?
音更さんとのセッションもそろそろ最終章ですね。では、次は過去事例からDX、PLMプロジェクトの失敗パターンについて紹介しましょう。また、よろしくお願いします。
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著者プロフィール
三河 進
株式会社グローバルものづくり研究所 代表取締役
大阪大学基礎工学部卒業。
大手精密機械製造業において機械系エンジニアとして従事後、外資系コンサルティングファーム、大手SI会社のコンサルティング事業を経て、現職に至る。
専門分野は、製品開発プロセス改革(3D設計、PLM、BOM、モジュラー設計、開発プロジェクトマネジメントなど)、サプライチェーン改革、情報戦略策定、超大型SIのプロジェクトマネジメントの領域にある。また、インターナショナルプロジェクトにも複数従事経験があり、海外拠点のプロセス調査や方針整合などの実績もある。
主な著書
・「図解DX時代のPLM/BOMプロセス改善入門」,日本能率協会マネジメントセンター(2022)
・「5つの問題解決パターンから学ぶ実践メソッド BOM(部品表)再構築の技術」,日本能率協会マネジメントセンター(2018)
・「製造業の業務改革推進者のためのグローバルPLM―グローバル製造業の課題と変革マネジメント」,日刊工業新聞社(2012)
・「BOM/BOP活用術」,日経xTECH(2016)
・「グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント」,ITメディア社MONOist(2010)など多数
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