100GHz帯域ベースバンド増幅器を10分の1に小型化、DCブロック機能を内蔵:組み込み開発ニュース
NTTは、次世代光通信ネットワークに求められる100GHz帯域ベースバンド増幅器ICモジュールの大幅な小型化に成功したと発表した。
日本電信電話(NTT)は2023年2月20日、次世代光通信ネットワークに求められる100GHz帯域ベースバンド増幅器ICモジュールの大幅な小型化に成功したと発表した。ベースバンド増幅器ICやパッケージ実装技術などを工夫することで、同社がこれまでに開発した100GHz以上の帯域を有するベースバンド増幅器ICモジュールと比べて体積で10分の1以下のサイズを実現した。今後は実用化に向けて、2023年度内をめどに製造のための体制構築を目指す。
今回開発した100GHz帯域ベースバンド増幅器ICモジュールは主に2つの技術によって実現された。1つは、NTT独自のInP HBT(インジウムリン系ヘテロ結合バイポーラトランジスタ)技術に基づく超広帯域ベースバンド増幅器ICの採用である。同ICは、100GHz以上の高周波側に向かって利得を強調するブロードなピーキング特性を有しているため、パッケージ実装の際に生じる高周波信号の損失低減を補償し、増幅器ICモジュールに求められる利得の平坦性(低周波から高周波にかけて一定の増幅率が得られる特性)を担保している。
もう1つは、この超広帯域ベースバンド増幅器ICを中核とするモジュールのパッケージ実装技術である。まず、モジュールと光ケーブルの間を損失少なく接続する同軸コネクターについて、従来技術のスレッドオン嵌合型に替えてプッシュオン嵌合型を採用した。スレッドオン嵌合型の同軸コネクターはネジを使って接続するためサイズが大きくなるが、プッシュオン嵌合型はネジを使わずに接続できるためパッケージやインタフェースの小型化につながる。そして、直流動作電電圧レベルの違いを吸収するDCブロック機能については、従来は超広帯域特性との両立が困難なため内蔵が難しかったが、高周波設計技術を駆使することで小型な薄層キャパシターをモジュール内部の高周波基板上に実装することに成功した。
NTTのこれまでの開発成果において、100GHz帯域以上のベースバンド増幅器ICモジュールのサイズは、スレッドオン嵌合型コネクターや外付けのDCブロック機能を含めて横幅が95mmに達していた。今回開発したモジュールは外形寸法が11.8×10.0×4.3mm、体積は507.4mm3で、体積比で10分の1以下になっているという。また、開発した超小型モジュールを使って、シンボルレート(1秒当たりの変調回数)が112Gbaud(ギガボー)の超広帯域PAM-4(1シンボルの中に4値の信号状態を割り当てるパルス振幅変調)信号をひずみなく増幅できることを確認している。
NTTが目指すIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)の光ネットワークでは、将来的に1波長当たり毎秒2テラビット以上の伝送速度が必要になることを想定している。この伝送速度を実現するためには、光送受信機に100GHz級のベースバンド増幅器ICモジュールが必要になることから、同社はさまざまな研究開発と実証実験を続けてきた。
今回開発した超小型の100GHz帯域ベースバンド増幅器ICモジュールは、次世代光通信ネットワークの構築や検証に必須となる先端広帯域計測器のリモートヘッド向けに需要が立ち上がりつつあることから、2023年度内に製造体制のめどを付けて早々に事業化を進めたい考えだ。
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