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磁石の空白領域「厚さ100μm」を実現、TDKのマイクロ磁石nano tech 2023

TDKは、「nano tech 2023」において、直径1.5mmの超小型モーターの開発が可能になる「マイクロ磁石」を披露した。独自の製造プロセスによって厚さ100μmのサマリウムコバルト磁石を成膜する技術によって実現した。

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 TDKは、「nano tech 2023」(2023年2月1〜3日、東京ビッグサイト)において、直径1.5mmの超小型モーターの開発が可能になる「マイクロ磁石」を披露した。独自の製造プロセスによって厚さ100μmのサマリウムコバルト(Sm-Co)磁石を成膜する技術によって実現した。半導体製造プロセスへの適用も可能なことからMEMS(微小電子機械システム)への応用も可能としている。

TDKの「マイクロ磁石」
TDKの「マイクロ磁石」。直径1μmにもかかわらず同サイズの鋼球が大量がくっついている 出所:TDK
「マイクロ磁石」で作製した直径1.5mmの超小型モーターを回す様子。モーターの先端についているミラーによってレーザー光が周囲のさまざまな方向に反射しているのが分かる[クリックで再生]

 ネオジムなどの希土類材料を用いた焼結磁石の薄型化を図る場合は切削加工が用いられるが、その高い磁気特性を維持できる薄さは500μm程度までとされている。一方、スパッタリングによって磁石膜を成形する方法もあるが、この場合は10μm以上の厚膜化は困難だ。「マイクロ磁石は、これまで製造が困難だった空白領域に当たる100μm前後の厚みを実現できる。ネオジムに次ぐ高い磁気特性を持つSm-Co磁石でこれだけの厚みがあれば、モーターなどのアクチュエータとしての活用が可能になる」(TDK 技術・知財本部の説明員)。

「マイクロ磁石」は空白領域に当たる100μm前後の厚みを実現した
「マイクロ磁石」は空白領域に当たる100μm前後の厚みを実現した[クリックで拡大] 出所:TDK

 マイクロ磁石の製造プロセスは大まかに2つに分かれる。まず、数百℃に加熱してSm粉を溶かした溶融塩に基材となるCoを投入することで、SmがCo基材の表面に拡散しSmCo2が形成される。その後、溶融塩から引き上げたCo基材を約1000℃で熱処理すると、表面のSmCo2から磁石膜であるSmCo5が形成される。Sm粉が溶けた溶融塩に触れた基材の表面が磁石化するので、凹凸表面への均一な磁石膜の成膜が可能でありMEMSへの適用も容易とする。「高温処理と低酸素環境が必要ではあるものの、MEMSで用いられる半導体製造プロセスは熱処理プロセスも用いられているので十分に組み込めるのではないか」(同説明員)。

「マイクロ磁石」の製造プロセス
「マイクロ磁石」の製造プロセス[クリックで拡大] 出所:TDK

 今回のnano tech 2023への出展を通して、マイクロ磁石を用いた製品開発に興味のあるパートナーを募りたい考えだ。応用案としては、マイクロポンプ、アウターローター型モーター、磁気浮上ミラー、変位センサー、ボイスコイルアクチェータなどもあり得るとしている。

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