半導体不足の裏で大奮闘、語られざる半導体商社の仕事を知る:製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)
半導体不足などのニュースで、半導体の流通に携わる「半導体商社」にスポットライトが当たる機会はあまりない。半導体の流通業務に携わる商社の立場から見て、昨今の半導体不足はどのように見えていたのか。そもそも半導体商社はどのような仕事をしているのか。コアスタッフ代表取締役に話を聞いた。
ようやく普通の仕事に戻れるか
――2023年以降は半導体市場が縮小するとの見通しもあり、半導体サプライチェーンも変化の局面を迎えているかと思います。半導体商社としてはどのように見ていますか。
戸澤氏 この過去2年、市場はパニック状態である意味異常だった。当社含め、半導体の販売代理店はただ半導体の納期調整をしていたようなものだ。2022年の夏以降、ようやく正常化に向けた動きが出ているので、これからようやく普通の仕事ができると思っている。
半導体商社にとって一番の仕事はデザイン・インだ。これをやらないと自社の事業の幅が広がっていかない。半導体は製品採用から量産化まで時間がかかる。だが、すぐには結果が出なくとも、製品採用数を常に増やしていかなければなければ会社に未来はない。もちろん納期の問題はしばらく継続すると思うが、半導体のサプライヤーをしっかり開拓してマーケティングを行い、魅力的な商材をそろえるのが大事になる。
――コロナ禍ではデザイン・インの仕事は進めづらかったのでしょうか。
戸澤氏 なにせ顧客の製品設計者が在宅中だ。個別に訪問するわけにもいかない。問い合わせがあれば半導体の製品提案もできるが、納期次第では難しい作業になる。
商社に問われる「存在意義」
――一連の半導体不足の騒動で、半導体商社への注目度も高まっているのではないですか。
戸澤氏 残念だが、まだ十分ではない。今後は半導体商社が「なぜ半導体メーカーと顧客の間に存在しているのか」と自らに問い、存在意義の確立をより一層強く意識していかなければならないと思う。ただ両者の間に入ってマージンを取って製品売買の仲介だけをしている商社に、未来はないと思わざるを得ない。
黙っているだけでは自分たちの付加価値は絶対上がらない。自社の価値向上のためにどんな活動をして、何を捨ててとがっていくかを決めて、そこを磨き上げる必要がある。この意味で、半導体商社にレベルアップが非常に求められているように思う。逆に言えば、それができている半導体商社は魅力的で、これから伸びていくのではないか。
現在、各商社がさまざまな取り組みを進めている。デザイン・ウィンに特化したサービスを提供する企業もあれば、M&Aを進めて会社規模を大きくし、サプライヤーや顧客への発言権を高めようとしている企業もある。どんな形でもいいが、全く個性のない会社は、この先退場せざるを得ないだろう。逆に言えばそれだけ一人一人のやれることが残されている、やりがいのある業界だ。
――ある記事で、コアスタッフは「半導体業界のAmazonを目指す」と紹介されていました。
戸澤氏 付加価値の重視は会社のミッションにも据えており、他の企業がやっていることはやらないと決めている。「じゃあなぜAmazonを目指しているんだ」とちょっと突っ込まれそうだが、Amazonが関わっていない半導体流通に関するニーズを一身に引き受けていきたいという意味だ。
当社は半導体と電子部品に加えて、タッチパネルや電線、工具など、顧客が必要とするものをひとまとめで提供できるのが特徴だ。すごく安価というわけではないが、少ない発注数から短納期で納品できる点を強みとして評価してもらっている。
――中小製造業を念頭に置いたサポート体制も強化しています。
戸澤氏 基本的に当社のターゲットは中小製造業だ。中小製造業はバイヤーの人数も少なく、資金もないなどさまざまな制約がある。しかし光る技術を持つ企業も多い。そうした会社をサポートするのが当社独自の立ち位置と考えている。ただ、中小製造業にはニッチなニーズも多い。他の半導体商社との提携関係を強化しつつ、ニーズに応えられるような体制構築を図る。
半導体不足は改善してきたといわれるが、中小製造業はまだまだ今後も苦労する傾向があるだろう。大手企業と異なり中小企業には半導体メーカーや半導体商社からのサポートがなかなか届きにくい。半導体商社には大手企業を優先して、中小は後回しにするというところもある。特にここ2年くらいは、そういった傾向が強かったように思う。そうした点で半導体商社のイメージが損なわれているのでは、と危惧もしている。
一方で、こうしたサポートの面で、商社の役割が今後重要性を増すとも考えている。通常のEコマースサイトで買う製品と異なり、半導体は継続的なサポートが不可欠だ。他国と比べても中小企業がこれほど多いのは日本ぐらいで、特別な環境にある。半導体のエコシステムを構成する各社と手を取りつつ、事業を進めていきたい。
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