半導体不足の裏で大奮闘、語られざる半導体商社の仕事を知る:製造マネジメント インタビュー(2/3 ページ)
半導体不足などのニュースで、半導体の流通に携わる「半導体商社」にスポットライトが当たる機会はあまりない。半導体の流通業務に携わる商社の立場から見て、昨今の半導体不足はどのように見えていたのか。そもそも半導体商社はどのような仕事をしているのか。コアスタッフ代表取締役に話を聞いた。
「人間の読み」を頼りに未来を予測する
――組み込み先の最終製品の種類によってもリードタイムは変わります。
戸澤氏 自動車やスマートフォン、PCなどは比較的見通しやすい。問題は半導体製造装置のような受注生産品だ。1台数億円の製品が不定期に数十台注文されるといった世界で、顧客ごとに細かいカスタムも必要なので、事前に在庫を積み上げておくことはできない。
今は状況が状況なので、半導体製造装置は1年のリードタイムで理解してもらえているが、以前はほとんど「2カ月で持ってきて」状態だった。そうなると、ある程度の在庫を、顧客や商社の間で互いに持ちつつ回す、共同のオペレーションが必要になる。在庫を保有しつつ、量産のサポートするのは商社の1つの役割だ。
――市況の読みも大事になるかと思います。
戸澤氏 アナログICやオペアンプ、コンパレーターなどの汎用品は大量に消費されるので、1点ずつフォーキャストを追うことは難しい。そのため半導体商社が事前に先行発注をかけるが、そこでは顧客製品の売れ行きに関するフォーキャストを立てること、そして情報収集が重要になる。
その辺りの予測は半導体商社の担当者に依存している面がある。しかし、この依存しているというのは、ポジティブな面がある。上層部からは顧客1社ごとの状況は把握できないので、毎日顧客対応をしている担当者の情報が重要になるということだ。私も1年目はいわゆる顧客対応に取り組んでいた。一人一人の活動範囲は意外と広く、個人的にはこうした点も半導体商社のやりがいにつながると思う。
――昨今、業務における属人性の高さは疎まれがちです。
戸澤氏 もちろん、工場DX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈では完全に属人性を排除していくのがいいだろう。しかし、例えば需要予測AI(人工知能)の場合だと、基本的にはAIなどが過去のランレートから将来の予測値を弾き出すことになる。だが、設計者やバイヤーから得たアナログな情報を加味して先を予測するのは、やっぱり人間にしかできない。その意味で、未来の情報は人間しか作れないのではないか。
世界中から半導体の在庫を見つけ出す
――半導体不足の中で、どのような課題に直面しましたか。
戸澤氏 顧客からは半導体のリードタイム短縮をよく求められた。取れる手段は幾つかある。まずは半導体メーカーに納期短縮を依頼すること、そして半導体商社が一定の在庫を持っておくことだ。ただ、在庫はあらかじめ仕込んでいないと効果が発揮できないので、今のように需要過熱が少し収まった時点で仕込むべきものだろう。
もう1つは過去に出荷した半導体製品の内、まだ在庫があるものを探し出すというものだ。ちなみに当社はこの方法を得意としている。
カタログディスティ(オンライン商社)で出荷された製品であれば、在庫を丹念に探して顧客に納品する。だが、そもそもカタログディスティで見つかる製品であれば、さして大きな製品不足の問題は生じていない。カタログディスティで見当たらなければ、今度は市場から余剰在庫を直接探すことになる。例えばある半導体メーカーが数年前に半導体製品を5000個出荷したが、現在に至るまで3000個しか使用していないことが分かったとする。その差分である2000個を獲得できれば、顧客に渡せる。
当社では余剰在庫の削減サービスを通じて、そうした在庫を見つけられるようにしている。在庫のコスト圧縮や会計上の評価減回避を狙う企業から回収する形だ。そして当社の「コアスタッフオンライン」に掲載し、ユーザーからの購入を待つことになる。
ただ、国内のメーカーであればこのように余剰在庫を見つけやすいが、海外企業の情報はかなりリーチしづらい。情報の到達難易度は地理的要因で大きく変わる。ドイツや米国、中国、香港、台湾、タイなど、日本にいるままでは情報を取得しづらい場所に探しに行き、フェーストゥーフェースで各国企業の担当者と情報交換することも大事だ。
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