エッジデバイスの通信環境構築を容易に、Wi-Fi 6対応のメッシュWi-Fi発売:製造業IoT
PicoCELAは2023年1月17日、Wi-Fi 6に対応したエンタープライズ向けメッシュWi-Fi「PCWL-0500」シリーズを発売した。AIカメラやIoTセンサーなどのエッジデバイスにおけるデータ収集、処理などを行いやすい仕組みを取り入れた。
PicoCELAは2023年1月17日、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応したエンタープライズ向けメッシュWi-Fi「PCWL-0500」シリーズを発売した。AI(人工知能)カメラやIoT(モノのインターネット)センサーなどのエッジデバイスにおけるデータ収集、処理などを行いやすい仕組みを取り入れた。
人や資材などの位置情報測位も可能
PicoCELAは高スループットかつ低遅延のWi-Fiネットワークを柔軟に構築できる、動的ツリー経路制御方式などを中核とする独自技術「PicoCELA Backhaul Engine(PBE)」を強みとする企業である。メッシュWi-Fi環境を構築することで、ネットワーク環境構築に必要なLANケーブルの必要本数を最大約90%削減し、通信機器やケーブル設置にかかる経済的コストや、保守点検の手間を大幅に減らすことができる。Wi-Fiの安定したネットワーク環境構築が難しい建設現場や工場、プラントなど、屋内外を問わず幅広い現場での導入実績を持つ。
PicoCELA セールス&プロダクトマーケティング部 グローバルプロダクトマネージャーの目黒学氏は「Wi-Fiはドアの開閉だけで通信が乱れることがある。それだと、工場現場などで機器のレイアウト変更などを行っただけで、通信のデッドゾーンができてしまう可能性もある。しかし当社技術を活用すれば、自動的に通信経路を確立して、安定したネットワーク環境を提供し続ける仕組みを提供することが可能だ」と説明する。
今回発表したPCWL-0500は、従来製品よりも活用シーンを広げるとともに、より高速で安定的な通信を提供することを目指して開発された製品である。ハードウェアのチップセットをアップグレードして、「PCWL-0400」シリーズと比較するとバックホールの速度を2倍にすることに成功した。
本体サイズは260×205×52mmで、給電方式はイーサネットケーブルに重畳するPoE(Power over Ethernet)である。最大接続可能端末数は2.4/5GHz共に128個。バックホール機能とアクセスポイント機能は共にWi-Fi 6に対応する。またアクセスポイントは802.11k/v/rに対応しており、高速ローミングが可能となった。Bluetooth接続も可能だ。
さらに、PCWL-0500上にはサードパーティー製のエッジコンピューティング用アプリケーションを導入できる。これによって、PCWL-0500に接続されたAIカメラやIoTセンサーなどのエッジデバイスからデータを収集し、前処理した上でクラウドに送信するといった使い方も可能だ。
エッジデバイスの利用が広がる中、収集したデータをクラウドサーバなどと送受信するための通信環境構築に悩むケースも少なくない。こうした場合にPCWL-0500を活用すれば、既存のWi-Fiネットワークを活用する形でクラウドとの通信が可能となる。もちろん、クラウドにデータを上げることなく、PCWL-0500だけで処理を完結させることもできる。
「アプリケーションベンダーにとっては、通信環境を気にすることなくアプリケーションを用意するだけで顧客に製品を提供できることになる。顧客の立場から見れば、新たな通信機器を買うことなくエッジデバイスによるデータ活用をしやすくなる」(目黒氏)
さらに特徴的な使い方として、電波の強弱を通じて対象物の位置情報を測位することも可能だという。「例えば、建設現場ではいろいろな機器や人間、建築資材など必要なものが頻繁に移動するので管理が難しい。PCWL-0500を活用することで、GPSのような高精度で位置を把握できるわけではないが、ある程度の精度でこれらの位置を特定できれば管理がしやすくなる」(目黒氏)
またPCWL-0500では、PicoCELAの製品を一元管理できるクラウドサービス「PicoManager」を標準提供する。通信速度が低下、あるいは機器が故障した場合などにアラートが配信される。管理者がダッシュボード上で確認し、異常の原因を分析することが可能だ。
PCWL-0500ではネットワークを通じて継続的な機能アップデートを行っていくという。
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