Wi-Fi 6Eは2022年末には国内利用可能に、シスコがハイブリッドワーク向けで展開:製造業IoT
シスコシステムズは、オフィス出勤とテレワークを組み合わせた働き方である「ハイブリッドワーク」や企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支える同社の最新のネットワーク技術について説明した。
シスコシステムズは2022年3月29日、オンラインで会見を開き、オフィス出勤とテレワークを組み合わせた働き方である「ハイブリッドワーク」や企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支える同社の最新のネットワーク技術について説明した。
シスコシステムズ 代表執行役員社長の中川いち朗氏は「今後コロナ禍が一定程度落ち着くとしても、以前のようなオフィス中心の働き方には戻らないだろう。当社は、ウィズコロナ、アフターコロナの時代に求められるハイブリッドワークを実現するためテクノロジーを駆使して支援し、DXレディに向けたプラットフォームを展開していく」と語る。
中川氏がハイブリッドワークを実現する要素として挙げたのが「安全安心なアクセス」「柔軟なコラボレーション」「全てを可視化」の3つである。シスコシステムズのハードウェアとソフトウェアから成る統合プラットフォームは、変化に即応することでこれら3つの要素に対応できるという。2022年の同社の事業戦略としても、ハイブリッドワークを重視していく構えだ。
Wi-Fi 6Eは爆速で低遅延、ローカル5Gとの統合運用も
テレワークが一定の比率を占めるであろうハイブリッドワークでは、出勤する従業員の数が少なくなるためオフィスのネットワークに掛かる負荷も小さくなるイメージがある。しかし、シスコシステムズの調査によれば、出勤した際にはビデオ会議やテレワークに対応したクラウドアプリケーションを多用することもあり、オフィスなどの拠点トラフィックはコロナ禍の真っただ中にあった2021年に2019年比で29%増加したという。「ハイブリッドワーク時代において、オフィスネットワークが果たす役割はさらに広くなる」(シスコシステムズ 執行役員 エンタープライズネットワーキング 眞﨑浩一氏)。
そこで、シスコシステムズが提案するのが、最新の無線LAN規格であるWi-Fi 6Eに対応するアクセスポイントや、同社の最先端ASIC「Silicon One」を搭載する大容量スイッチ、そして有線や無線、ローカル5Gなど接続手法の違いを超えて統合的なネットワークアクセス制御を可能にする「Cisco ISE(Identity Services Engine)」、クラウドアプリケーションとして展開する「Cisoc DNA Center」や「Cisco DNA Spaces」から成るソリューションである。
従来の2.4GHz帯や5GHz帯ではなく、6GHz帯を用いるWi-Fi 6Eについてはアクセスポイントの新製品「Cisco Catalyst 9136」と「Cisco Meraki MR57」で対応する。眞﨑氏は「6GHz帯は干渉が少ない周波数帯であり、通信速度は“爆速”で低遅延も特徴になる」と強調する。また、Wi-Fiの他にUSBやThread、Bluetoothなどのインタフェースや通信のサポートでIoT接続を集約するゲートウェイになり、温度や湿度だけでなく空気品質も検知する環境センサーの搭載により安全なオフィス環境を作る分析基盤にもなる。
なお、日本国内でのWi-Fi 6Eの利用については政府が検討中であり、2022年末ごろに認可が下りる見通しだ。Cisco Catalyst 9136とCisco Meraki MR57は既に販売を開始しているが、認可が下りた段階でソフトウェアアップデートにより機能をアクティベートする予定である。
また、シスコシステムズは2022年2月から、ローカル5Gのマネージドサービス「Cisco Private 5G」を一部先行顧客に提供しているが同年夏には正式販売を始める計画だ。クラウドベースのCisco Private 5Gは、Cisco ISEによって先述したアクセスポイントやスイッチなどで構成するオフィスネットワークと統合した運用が可能なことを特徴としている。
なお、無線機はシスコシステムズ自身では提供せず、認証/検証済みのOpen RAN(O-RAN)に準拠する製品であれば対応させていく方針だ。まずは、Airspan Networks、JMA Wirelessの製品から対応を始めるとしている。
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