ローカル5Gを「Wi-Fi並みのコストで」、NECネッツエスアイの成長戦略3本柱:製造業IoT
NECネッツエスアイは2022年2月28日、同社が展開するローカル5Gの事業について、拡大を実現するための3つの戦略を新たに発表した。ローカル5G環境を簡単に構築できる仕組みや、導入コストを低減するための技術導入などを提案する。
NECネッツエスアイは2022年2月28日、同社が展開するローカル5Gの事業について、拡大を実現するための3つの戦略を新たに発表した。ローカル5G環境を簡単に構築できる仕組みや、導入コストを低減するための技術導入などを提案する。
光回線の地域ネットワークを活用
NECネッツエスアイは今後、まちづくりや働き方改革などの領域で培ったDX(デジタルトランスフォーメーション)の知見と、インビル(建屋内)向けローカル5Gの実証実験の経験を掛け合わせることで、ローカル5Gサービス提供の本格化を目指すとしている。このサービス構築において、柱となるのが「地域ネットワークに最適なローカル5Gの提供」「インビル市場に向けたコストイノベーション」「Beyond5Gに向けた最先端対応」の3つの戦略だ。
「地域ネットワークに最適なローカル5Gの提供」は、共通5Gコアと、各自治体にあるケーブルテレビ事業者を結ぶ光回線の地域ネットワークをVPN接続でつなげる。これに同社の子会社であるNECマグナスコミュニケーションズが展開する5G一体型基地局を接続するだけで、エリア内でのローカル5Gネットワークを簡単に構築できるようにする。
NECネッツエスアイ ビジネスデザイン統括本部 デジタルタウン推進本部第三ビジネス推進グループ グループマネージャーの有川洋平氏は「例えば、電柱付近に一体型基地局を置くことで、付近の集合住宅で高速な5G通信を行えるようにする。河川の水位監視のために4K動画でのリアルタイム監視を行うといった用途での使用も可能だ」と語った。
「アンテナ分散技術」でコスト低減
「インビル市場に向けたコストイノベーション」では、韓国のHFRと提携して「アンテナ分散技術」を活用して、ローカル5Gの導入コストを「Wi-Fi並み」(有川氏)に抑えることを目指す。
集約基地局(CU)とリモート局(DU)にHFRのゲートウェイ製品「ORAN MUX」をつなげて、その先にアンテナユニット(RU)を最大13個接続する構成を提案する。1つの基地局で多数の5G通信接続が可能になるため、従来よりもローカル5Gの導入コスト低減が見込めるという。導入先としては、工場やプラント、ビル、学校、病院などを想定する。
なお、ORAN MUXは2022年8月に発売予定。
東大発スタートアップと最先端技術研究へ
「Beyond5Gに向けた最先端対応」においてはFLARE SYSTEMSと提携し、6Gなど次世代ネットワークを見据えた先端技術の研究開発力を高めていく。FLARE SYSTEMSの企画開発力に、NECネッツエスアイのシステムインテグレーション(SI)の知見を組み合わせて生かす。
FLARE SYSTEMSは、一体型基地局の機能に加えて5Gコアを1つのPCに収めたソフトウェア基地局「FW-L5G-1」などの製品を展開する、東京大学発のスタートアップだ。専用製品を使わずに汎用ハードウェア上で基地局の全ての機能を実現できるため、ローカル5Gの導入コスト低減につながる。上りと下りのスループットを自由に変えられるなど、カスタマイズ性にも優れているという。
今後のローカル5G市場での展開について、有川氏は「今回発表した3つの戦略に、これまで当社が培ってきたDXやローカル5Gの実証実験の知見を組み合わせて、プライベートネットワーク市場のリーダーになれるよう事業を推進していく」と語った。
事業の売り上げ目標としては、2023年度までに100億円を目指すとしている。
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