この記事は、2023年1月23日発行の「日刊MONOist」に掲載されたMONOistの編集担当者による編集後記の転載です。
MONOistでは毎年、編集部員が頭をひねって新しい1年を展望する「新年展望」を掲載していますが、先週はその企画の1つとして、金属3Dプリンタの動向を示した「再び注目集まる金属3Dプリンタ、2023年は国内で本格普及元年となるか」を掲載しました。この記事では、JIMTOF2022などでの出展状況や技術動向を踏まえつつ金属3Dプリンタ普及への期待を示すとともに、なかなか普及が広がらない国内の状況への危惧と課題について解説しています。
記事でも触れていますが、金属3Dプリンタは以前から「モノづくりを変える」と大きな期待を背負ってきた製品ですがなかなか普及が進んでいません。金属3Dプリンタの価値は、従来は切削や穴あけなど「引く」が中心だった金属加工装置に対し、溶かした金属を層状に積み上げる積層造形(Additive Manufacturing、AM)により「足す」加工を新たに実現できるようになることだといわれています。この新たな「足す」金属加工が可能となったことで、中空形状など切削では複数部品を組み合わせなければ実現できなかった製品を一体で造形できるようになります。また、異種金属の接合や肉盛り、コーティングなども容易に行え、「引く」金属加工による材料の無駄なども削減できます。
こうした期待があるにもかかわらず、なかなか普及が進まない要因として、相互に関係する3つの壁があるといわれています。
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