再び注目集まる金属3Dプリンタ、2023年は国内で本格普及元年となるか:MONOist 新年展望(2/2 ページ)
金属3DプリンタによるAM(Additive Manufacturing)が製造業で存在感を増している。長い歴史を持つ金属加工を根本から変える技術なだけに、大きな可能性を秘めているのと同時に導入に向けたハードルも存在する。今後、果たして普及は進むのか、日本国内の状況を占った。
世界と比べ伸びが小さい日本市場
確かに金属3Dプリンタは多くのメーカーから多彩な方式が出されている一方で、まだ用途は航空機や高級車の部品製造、医療など一部に限られている。装置価格が高いだけでなく設計から材料、品質保証までが様変わりするため、おいそれと投資できる対象ではない。
その点、ノウハウの蓄積が先行しているのは海外メーカーだ。ドイツのEOSなどは装置単体にとどまらず、AMを中心とした設計、材料まで含めたコンサルティングサービスに軸足が移りつつある。米国のGEは2016年に金属3Dプリンタメーカーを買収し、GEアディティブとして金属3Dプリンタで作った部品を、自社の航空機部品で使用するというサイクルで急速に技術力を高めている。同社の最新機であるバインダージェット方式の「Series 3」は自動車業界などの大量生産への対応を狙ったモデルとなっている。
こうした積極的な海外の動きに対して、国内は10年以上は遅れているといわれている。それに対し、政府も手をこまねいたわけではなく、経済産業省の主導でメーカーや大学が集まって2014年に技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)が立ち上がり、国内メーカーによる金属3Dプリンタの開発などを促進してきた。
それでも、IDC Japanによれば、グローバルに占める3Dプリンタ装置の日本市場の割合は2016年で約3%(121億円)、2022年の予測も約2%(190億円)しかなく、その成長率も世界の年約20%以上に比べて日本は約9%程度の伸びとなっており、その幅もかなり小さい。軍需含めた航空宇宙産業の裾野が狭い国内では投資対効果が見込めないことが要因だ。
金属3Dプリンタで自動車部品を量産?
ただ、某工作機械メーカーの幹部は「早ければ2023年にも日本の大手自動車部品メーカーが、自動車なら必ず入っている部品をAMで製造する」と明かす。時期的な見通しはともかく、今後装置の進化や低価格が進んでいけば、金属3Dプリンタの活用が一般的な自動車部品製造にも広まっていく可能性は高い。
日本AM協会の澤越俊幸氏は「装置だけで見れば追い付けないが、設計や後加工まで合わせたトータルのモノづくりならまだ海外に追い付ける可能性はある」と語る。そのためにも単なる、情報収集から一歩踏み込んだ取り組みを企業に促す。「有償でもいいから具体的にメーカーにサンプルを依頼してみてほしい。AMでできること、できないことが見えてくる。肉盛り溶接やコーティングをAMに置き換えれば、ビジネスにも結び付き、AMがどんなものかもある程度経験できる」(澤越氏)。
ヤマザキマザックの山崎氏は「海外でドラスチックにサプライチェーンの変革が起こっている。日本を飛ばして経済が回り始めているような気がする」とも語っている。恐れるべきは、国内の製造業が世界のトレンドから取り残されることだ。メーカー幹部からは「自動化などを訴求しても、一番人気は立形3軸マシニングセンタだ」と嘆く声も聞かれる。日本のモノづくりは大きな現場の技術力が支えとなってきた。金属3Dプリンタはその基盤を覆す可能性を持っている。
米国大統領のジョー・バイデン氏は2022年に「AMフォワード」を打ち出し、国内業界の支援を進めている。企業だけでなく日本政府からも、もう一段の後押しを望みたい。
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