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振動と音に関する基礎量 その1CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(2)(4/4 ページ)

連載「CAEと計測技術を使った振動・騒音対策」では、“解析専任者に連絡する前に、設計者がやるべきこと”を主眼に、CAEと計測技術を用いた機械の振動対策と騒音対策の考え方や、その手順について詳しく解説する。連載第2回では「振動と音に関する基礎量」について取り上げる。

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デシベルの「ベル」は何の単位?

 騒音の大きさは「デシベル[dB]」で表現します。「デシ[d]」とは“10デシリットルが1リットル”の「デシ」です。「ベル」はというと、任天堂の人気ゲーム「どうぶつの森」シリーズの通貨の単位ではありません。「ベル」はアレクサンダー・グラハム・ベル(参考文献[2])が定義した電話における電力の伝送減衰を表す量で、電力(パワー)が10分の1になるとき、−1[B](ベル)としました。よって、電力が10分の1になるときは−10[dB]です。

 音の場合は、音圧レベル(SPL:Sound Pressure Level)をデシベルで表記します。次式となります。

式30
式30

 音圧実効値は観測された圧力の実効値で、基準音圧は人がやっと聞こえるくらいの音の圧力です。エネルギーは振幅の二乗なので20という数字が出てきました。大体3[dB]の差があれば人は音が小さくなったと気付くそうです。−3[dB]を音圧の振幅で表現すると0.707倍です。振動変位を30[%]低減すると「おおっ、かなり下がったな」といわれるのですが、音圧を30[%]下げても「えっ、変わったの?」というくらいでしょうか。“騒音対策は、振幅をかなり下げないと効果が実感できない”のです。

 騒音計のキャリブレーション信号は多くの場合、94[dB]です。Lp=94[dB]となります。94[dB]の音を出す校正器(音源)があって、騒音計と同時に購入するのですが、その音源に騒音計のマイクを挿入して、騒音計が94[dB]を指し示したら騒音計は正常です。また、騒音計から電圧信号が出て、それをFFTアナライザやAD変換器につなげるのですが、その電圧が94[dB]に相当します。94[dB]の音圧を計算すると次式となります。ちょうど1[Pa]ですね。

式31
式31

実効値(rms値)

 前述した音圧は実効値です。100[V]コンセントに、オシロスコープをつなげると交流電圧の波形が振幅141[V]の正弦波になることは皆さんご存じでしょう。100[V]は実効値です。よって、コンセントの活線に触れて「ビビッ」ときた場合は、100[V]に感電したのではなく、141[V]に感電しているのです。式を書いておきます。Root Mean Squareですね。

式32
式32

 振幅1の正弦波の場合は以下となって、実効値は0.707となります。

式33
式33

 次回、騒音測定でよく使う「A特性」と「音響インテンシティ」について説明します。お楽しみに! (次回へ続く

⇒「連載バックナンバー」はこちら

Profile

高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表


1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。

構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ


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