振動と音に関する基礎量 その1:CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(2)(3/4 ページ)
連載「CAEと計測技術を使った振動・騒音対策」では、“解析専任者に連絡する前に、設計者がやるべきこと”を主眼に、CAEと計測技術を用いた機械の振動対策と騒音対策の考え方や、その手順について詳しく解説する。連載第2回では「振動と音に関する基礎量」について取り上げる。
体積圧縮率Kという定数を導入します。例えば、100[kPa]の圧力上昇で体積が半分になったとします。体積圧縮率は次式となります。
式10で体積変化率aを求めていました。圧力とaの関係は体積圧縮率Kを用いて次式となります。
式11を代入します。
上式を時間tで微分します。
上式をもう一度時間tで微分し、式14を代入します。
式19は、1次元の波動方程式です。時間tを2階微分と座標xの2階微分が等しい関数はsinとcosでした。幾つもの波長を持つsinとcosの和が式19の解となり得ます。フーリエ級数を使って解くタイプの微分方程式ですね。今、定数cを次式で定義します。後で説明しますが、cは音速となります。
式19の解の1つとして次式が解となり得るか調べてみましょう。
式21を式19左辺に代入したものを以下に示します。分母の(t−x/c)2は2乗ではなく(t−x/c)で2回微分するという意味です。
式22を式19右辺に代入したものを以下に記します。
式22と式23は一致したので、式21は波動方程式の解の1つです。では、t=0[s]、x=0[m]の圧力値と、t=1[s]、x=c[m]の圧力値を比較すると以下となって一致します。つまり、1[s]後のc[m]離れた位置の圧力は0[s]の圧力と等しいのです。圧力が速度cで伝搬したといえます。よって、cは音速となります。
式21は音速cの進行波だと分かりましたので、微小直方体の変位ξも音速cで伝搬するはずです。よって、変位ξは次式で表されます。
変位ξを時間tで微分したものが微小直方体の速度でした。次式となります。
式17に式26を代入します。次式となります。
式20を使うと上式は次式となります。
音速cと密度ρは温度によって変化しますが、空気特有の定数です。ということは、微小直方体の速度と圧力、つまり音圧は比例関係にあります。これは重要な関係です。
移動するのは圧力なのですが、空気の微小直方体は前述したように運動しています。そのイメージを図8に示します。
微小六面体を小さな空気の塊と考えましょう。この小さな空気の塊を「粒子」あるいは「流体粒子」と呼び、その速度を「粒子速度」といいます。粒子の運動の振動数が音の周波数となります。粒子速度と音速は関係はありますが、異なる値を持ちます。音源である壁近傍の連続性から、壁の速度と空気の粒子速度とは一致します。つまり、音圧は音源の振動速度に比例する量です。言いたかったのは以下です。
騒音対策では音源の振動速度を測定し、振動速度を低減する必要がある
なお、粒子速度は、次回紹介する「音響インテンシティ」の解説でも登場します。
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