量子コンピュータでも解読困難、最新の暗号化技術を搭載したICカードを開発:IoTセキュリティ
凸版印刷と情報通信研究機構は、極めて高い暗号化技術を備えたICカード「PQC CARD」を開発し、有効性の検証に成功した。2025年には医療や金融用途で限定的に実用化し、2030年から本格的に提供を開始する。
凸版印刷と情報通信研究機構(NICT)は2022年10月24日、極めて高い暗号化技術を備えたICカード「PQC CARD」を開発し、有効性の検証に成功したと発表した。2025年には医療や金融用途で限定的に実用化し、2030年から本格的に提供を開始する。
PQC CARDには、量子コンピュータでも解読が困難な耐量子計算機暗号(Post-quantum cryptography、PQC)の1つで、次世代の電子署名方式「CRYSTALS-Dilithium(クリスタルダイリチアム)」を採用している。開発には、最先端のPQC技術を有するカナダのISARAも協力した。
認証スピードは従来同様で、ユーザーの利便性は変わらない。既存のリーダライタや通信プロトコルの変更、ハードウェアの更新も不要だ。
実験では、NICT運用のテストベッド「保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システム(H-LINCOS)」上で医療従事者のICカード認証と電子カルテデータへのアクセス制御を検証。ICカード認証と顔認証を組み合わせることで、権限に適した電子カルテへアクセスできることを確認した。
今後は同技術を活用し、高秘匿情報の安全な流通、保管、利活用ができる量子セキュアクラウド技術の実用化を推進する。さらに、電子メールやオンラインショッピング、キャッシュレス決済、ネットバンキング、コネクテッドカーなど、高いセキュリティを求めるシステムへのPQCの適応を目指す。
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