ピストンピンとコンロッドの摩耗や焼き付きをシミュレーションで予測、東北大とホンダ:CAEニュース
東北大学 流体科学研究所は2022年9月30日、エンジンの摺動部摩耗と焼き付き発生部位のシミュレーションでの予測に成功したと発表した。シミュレーション法をホンダと共同開発した。スーパーコンピュータでエンジンのピストンピン摺動部における摩耗や焼き付きの発生部位を予測することに成功するのは「世界初」(東北大学)だとしている。
東北大学 流体科学研究所は2022年9月30日、エンジンの摺動部摩耗と焼き付き発生部位のシミュレーションでの予測に成功したと発表した。シミュレーション法をホンダと共同開発した。スーパーコンピュータでエンジンのピストンピン摺動部における摩耗や焼き付きの発生部位を予測することに成功するのは「世界初」(東北大学)だとしている。
これまで、流体潤滑における摩耗や焼き付き発生部位の検証は理論や計算による予測が不可能だとされており、長期間にわたる負荷試験を行わざるを得なかった。
今回発表した研究成果は、自動車用エンジンだけでなく流体潤滑を用いた全ての摺動部品に適用可能であり、輸送機械や産業機械の損傷予測や構成要素の安全性指針の策定に貢献するとしている。また、摩耗や耐久性の試験にかける時間や製造コストの削減、機械接触を伴う構成要素の最適設計が可能になるという。
ピストンピンが弓なりに変形するのが発生要因
レシプロエンジンの故障原因として最も多く挙げられるのが、部品の摩耗や焼き付きだ。潤滑油の油膜が途切れることで金属部品が接触し、傷がついたり固着したりする。焼き付きが生じるとエンジンが始動できなくなり、エンジン自体の交換が必要になるなど被害が大きくなる可能性もある。
エンジンの中でも、特にピストンピンとコンロッドの間の潤滑は内燃機関において最も厳しい条件下での流体潤滑が求められる。ただ、摺動面において潤滑油の油膜と固体表面の間で摩擦や発熱、相変化、表面粗さなど複雑な物理現象が同時に発生するため、摩耗に至るまでの詳細なメカニズムは明らかになっていなかった。
東北大学とホンダは、ピストンピンとコンロッド小端の間の相変化を伴う狭あい潤滑油液膜流れに着目し、構造体の弾性変形と流路変化の相互作用を考慮した混相流体−構造体連成解析手法を新たに開発。厳しい負荷条件下におけるトライボロジー特性に関するシミュレーション予測法を開発した。摺動部における摩耗や焼き付き発生部位の予測に成功するとともに、構成部品の特異な変形挙動が摩耗や焼き付きの発生要因であることを発見した。
ピストンピンの弓なり状の変形が、コンロッドエッジにおける機械接触と焼き付きの要因になった。ピストンピンに加わる荷重によって潤滑油中の圧力が荷重方向に上昇するが、弾性変形が圧力上昇を抑制する効果を持つため、圧力分布は剛体連成解析の結果よりも滑らかであることが分かった。また、荷重が加わったときにピストンピンが弓状に変形することも判明した。コンロッドの変形量はピストンピンの変化量よりも小さく、ピストンピンの変形量が両者の隙間幅に大きく影響した。
潤滑油膜の流動特性と構成部品の弾性力学的挙動を同時に扱う連成解析手法は、輸送機械や産業機械の損傷予測や、構成要素の高耐久性設計に貢献するとしている。
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