アステラス製薬がMRとメタバースを活用、デジタルコミュニケーションの強化へ:VRニュース(2/2 ページ)
アステラス製薬は、同社営業本部傘下のデジタルコミュニケーション部で取り組みを進めているMR(複合現実)やメタバース関連のプロジェクトについて説明。2021年度まで進めてきたPoC(概念実証)の成果を基に、2022年度後半からはさらに規模を拡大した実証や機能拡充を進めていく方針だ。
メタバースを活用する「デジタルホールプロジェクト」
一方、メタバースの活用を目指しているのが「Astellas Digital Hallプロジェクト(以下、デジタルホールプロジェクト)」である。HICARIプロジェクトは医療従事者と患者の間のコミュニケーション支援が目的だが、デジタルホールプロジェクトはアステラス製薬から医療関係者への新規の情報提供チャネル構築が目的となっている。
コロナ禍を経て、リモートワークやオンライン会議など、場所や時間の制限のないオンラインコミュニケーションへの移行が進んでいる。ただし、これらのオンラインコミュニケーションは、対面でのコミュニケーションと比べて双方向性の観点などで課題があり、直近ではリモートとリアルを組み合わせた“ハイブリッドワーク”なども提案されている状況だ。
デジタルホールプロジェクトでは、医療関係者との全く新しい双方向コミュニケーションの実現を目指している。Phase1では、オンライン会議システムなどで行われることの多い研究会や講演会を、仮想空間であるメタバース上で行えるシステムの構築に取り組んでいる。アステラス製薬 つくば研究センター(茨城県つくば市)のホールをイメージしたメタバース内の会場に、参加者は「Chrome」や「Edge」などのWebブラウザから参加できるシステムとなっている。同接数は、メタバース内を参加者が自由に動いたりする場合は約20人で、会場で講演を視聴する場合など参加者の動きが少ない場合は約200人まで対応できるという。
2021年度に営業本部管轄の講演会でパイロットを実施しており、現在は全国規模で開催するWebシンポジウムでの運用もスタートさせている。パイロットでの定量評価は、全体満足度で約80%、リピート意向で約90%が肯定的評価となった。現在のシステムでは、メタバース内の会場で講演者のプレゼンを視聴する講演会機能の他、質疑応答を行う機能、資料などを閲覧できる展示ブース機能も備えている。兒玉氏は「現在は、メタバースで最も期待されるであろう、参加者間の双方向コミュニケーション機能を実装できていない。機能そのものは開発を進めているので、今後は実装して活用できるようにしていきたい」と述べている。
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