アステラス製薬が唯一無二の技術「DAIMON」で目指す未来の医薬品のモノづくり:製造マネジメント インタビュー(1/3 ページ)
アステラス製薬のDX戦略の中で、高品質なモノづくりを実現するために開発したソリューションとして注目を集めているのが自社創成モノづくりデータマイニングシステム「DAIMON」である。2018年から医薬品製造への実装を始めたDAIMONは、既に一定の成果が得られており、これからは実装の範囲を広げていく段階にある。
国内製造業のさまざまな業種で取り組みが進んでいるDX(デジタルトランスフォーメーション)だが製薬業もその例外ではない。コストがかさむ新薬の開発を成功させ、それらの高効率かつ高品質の生産を行うためにデジタル技術は欠かせない。国内大手製薬メーカーであるアステラス製薬もDX戦略を強力に推進している。
アステラス製薬のDX戦略の中で、高品質なモノづくりを実現するために開発したソリューションとして注目を集めているのが自社創成モノづくりデータマイニングシステム「DAIMON」である。2013年に検討を開始し、2015年に開発をスタートさせ、2018年から医薬品製造への実装を始めたDAIMONは、既に一定の成果が得られており、これからは実装の範囲を広げていく段階にある。
医薬品の品質/生産トラブルは発生してからの事後対応が大変
DAIMONの名称は「Data Analysis and Integration for Multivariate mONitoring(データを収集解析し多変量でモニタリングする)」に由来している。ビッグデータをはじめとする「データサイエンス」と、原因調査、変動検出、未然防止を目指す「品質に対する感度」という2つの観点に基づく取り組みとなる「データマイニング」を、医薬品のモノづくりに適用するためのツールとなる。
新規の医薬品を研究開発し上市するには10年以上の期間がかかるといわれ、近年はさらに難易度が高くなっていることが知られている。しかし、これらの研究開発を完了し生産プロセスを構築した医薬品の生産を安定的に継続する際にもさまざまなハードルが待ち受けている。アステラス製薬 製薬技術本部 製剤研究所 プロセス設計研究室の則岡正氏は「開発段階で十分に製品と生産プロセスの理解を深めてから上市するが、上市後の生産段階でもさまざまな変動に遭遇してしまうことは避けられず、結果として品質/生産トラブルにつながりかねない。だからこそ、生産段階に入っても製品と生産プロセスへの理解を深め続ける必要がある。そこで取り入れたのがデータマイニングだ」と語る。
アステラス製薬でも品質/生産トラブルへの対応は悩みの種であり、対応に要する期間が数年に及ぶことが課題になっていた。実際にこれまでに起こったトラブル事例では、散在していたデータの収集に時間がかかり、原因が一変量ではなく多変量であるため解析も複雑になり、それらが完了してから規制当局への是正措置を策定し申請しなければならないため対応期間が2〜3年になるのは当たり前だったという。「品質/生産トラブルは発生してからの事後対応が大変。ひいては製品を供給できないことが長期間続くことによって、患者の健康や社会的信頼の損失にもつながる」(則岡氏)。
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