CO2を新たな資源に、デンソーがCO2循環プラントを披露:脱炭素(2/2 ページ)
デンソーは、カーボンニュートラルに向けた取り組みを推進しているが、その中でCO2を回収し、利活用する技術開発を推進。安城製作所(愛知県安城市)に設置したCO2循環プラントを披露した。
安城製作所でCO2循環プラントを設置
デンソーではこれらの実証施設として、2020年6月に、安城製作所にCO2循環プラントを設置。豊田中央研究所と共同で、V2XおよびCO2回収についてさまざまな検証を進めている。
V2X技術については、EVステーション4基を用意し、安城製作所内の太陽光発電の余剰電力をEVもしくはPHEV(プラグインハイブリッド車)にためる。その再生可能エネルギーをCO2循環プラントで活用することで、カーボンニュートラル化を実現する。充放電に使う充電設備はデンソー製の市販製品を活用しているが、エネルギーマネジメントシステムによる制御などはさまざまな検証を行いながら、最適なノウハウを蓄積しているという。
「さまざまなメーカーのEVやPHEVを活用しても問題なく最適な充放電が行えるかどうかという点や、それぞれのクルマの電池の寿命を縮めないような使用方法や制御方法などを研究している」(担当者)。工場の従業員のクルマを電力の貯蓄先に使用するような使い方を想定した場合、それぞれの電池状況などの把握も必要になることも想定されるが「現段階では、急速充電方式であるCHAdeMOでの通信で取得できる情報に限られているが、その中でも最適化する方法はないかを模索している」(担当者)という。
CO2回収については、安城製作所内のアルミ溶解炉から発生する排気ガスから不純物を取り除き、CO2を回収する。これに、水素発生機により水(H2O)から生み出した水素を加え、これらを合成しメタン(CH4)化する。余ったCO2は同プラント内で循環させることで回収したCO2を外に排出することなく再資源化する。排出するのは水と酸素だけで、水素の発生やメタン化に必要な電力をV2XによりEVやPHEVにためた電力からまかなうことで、同プラントの運用はカーボンニュートラル化ができるとしている。
現状のプラント内の設備の多くはデンソー以外のメーカーのものを使用しているが、石塚氏は「まずは、実験施設としてさまざまな技術の実証を進められるようにすることに重きを置いた。システムとして全体を構築した場合に発生する知見や課題などは、個々の技術開発だけでは見えない場合も多いためだ」と考えを述べている。
同プラントでは、メタンで7kW相当、CO2では年間8トン相当の回収が行えるだけの能力しかないが「大規模な回収だけでなく、小規模な回収設備をさまざまな設備に設置するような使い方があると考えている。このまま展開するわけではないが、実証の成果は、安城製作所を皮切りに他の工場や顧客、取引先にも展開していきたい」と石塚氏は語る。
ビジネス展開としては回収プラントのシステム全体の展開と、これらで培った技術を切り出す展開の両面を検討しているという。例えば、切り出す技術としては、CO2回収技術などがある。現状ではCO2回収は熱スイング式を採用しているが、効率が課題で、電界式CO2回収器の開発をグリーンイノベーション基金なども活用しながら進めているところで、これらを実用化し外部展開を進める。また、2023年以降はSOFC(固体酸化物型燃料電池)やSOEC(固体酸化物形電解セル)の導入も計画しており、これらの展開も計画する。
CO2回収の課題としてはエネルギー効率を挙げる。「現在は再生可能エネルギーからメタン化するまでのエネルギー効率は50%以下だが、最終的に総合効率で80%程度までくると天然ガスと比較できる段階までくるだろう」と石塚氏は語る。
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