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CO2見える化のルールづくりはどこまで進んだか、JEITA担当者が語る現状と課題製造業×脱炭素 インタビュー(1/3 ページ)

現在、サプライチェーンのGHG排出量見える化に関するルール作りが国内外の団体で進められている。JEITAもそうした団体の1つだ。「Green x Digitalコンソーシアム」の設置や、その部会である「見える化WG」を通じて議論を深めている。GHG排出量の算定や可視化の枠組み作りに関する議論はどのように進んでいるのか。また今後議論すべき課題は何か。見える化WGの担当者に話を聞いた。

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 カーボンニュートラル実現に向けて製造業が直面している問題の1つが、GHG(温室効果ガス)プロトコルにおけるスコープ3の排出量削減だ。工場やオフィスからの直接排出だけではなく、上流から下流まで、サプライチェーン全体でCO2をはじめとするGHGの排出量をいかに減らすかが問われている。

 CO2排出量を効率よく削減していくには、まずはサプライチェーン上で排出量が多い領域をしっかり特定する必要がある。このため企業はCO2排出量削減の第一歩として、自社サプライチェーンの排出量算定、可視化に取り組まなければならないのである。

 ただ現状では、排出量の算定方法や企業間における排出量データ交換の仕組みなどについて、統一的なルールが明確に定まっていない。このため企業としては、どのような方法でサプライチェーンの可視化を進めるべきかが、いまひとつ分かりづらい状況だ。

 このため現在、国内外の業界団体や組織を中心にサプライチェーンのGHG排出量見える化に関するルール作りが進められている。その中で積極的な動きを見せているのが電子情報技術産業協会(JEITA)だ。JEITAは2021年10月に「Green x Digitalコンソーシアム」を立ち上げ、その部会として「見える化ワーキンググループ(WG)」を設置した。

 GHG排出量の算定や可視化の枠組み作りに関する議論はどのように進んでいるのか。また今後議論すべき課題は何か。見える化WG主査を務める稲垣孝一氏(NEC)に話を聞いた。

検討から実証フェーズへ

 Green x Digitalコンソーシアムは2021年10月にJEITA内部で設立された組織で、カーボンニュートラル実現に向けたデジタル技術やソリューションの創出や活用促進などに取り組む組織である。デジタル技術の提供者とユーザー双方の立場から議論と実証を進めるため、JEITA会員以外にも建設業や輸送、情報通信、金融など、多種多様な業界から約120社が正会員として参加している。


Green x Digitalコンソーシアム設立の背景[クリックして拡大] 出所:Green x Digital コンソーシアム

 こうした議論や検証活動を実質的に担っているのがWGであり、見える化WGに加えて「バーチャルPPA早期実現対応WG」「DC脱炭素化WG」が設置されている。見える化WGではその名の通り、サプライチェーン全体でのCO2排出量見える化に関する議論を進めている。現在、メンバー企業は102社だ。

 見える化WG内には個別具体的なテーマを検討するためのサブワーキンググループ(SWG)として、「ルール化検討SWG」と「データフォーマット・連携検討SWG」が設けられている。前者はCO2排出量の算定やデータの収集、共有方法を、後者ではデータフォーマットの統一化や海外企業も含めたグローバルでのデータ連携などを検討する。それ以外のテーマは、見える化WG全体で議論することになる。

 見える化WGは2021年11月の設立から2023年3月までの活動内容をスケジュール化し、「準備フェーズ」「検討フェーズ」「実証フェーズ」という3フェーズで計画している。準備フェーズ(2021年11月〜2022年3月ごろ)では、国内外における脱炭素に関する取り組みの現状調査などを通じて、カーボンニュートラル実現という最終的なゴールに向けてWG参加企業間での目線合わせを行ってきた。この成果として2022年5月に、議論の成果や今後の検討事項などをまとめた「一次レポート」を公開している。


見える化WGのスケジュール[クリックして拡大] 出所:Green x Digital コンソーシアム

見える化WG主査の稲垣孝一氏

 現在は検討フェーズ(2022年4月〜9月)の最終段階に入っている。同フェーズでは、GHG排出量データの算定や取得方法、企業間でのデータ共有方法やそれに必要な技術検討を進めている。その結果を受けて、「実証フェーズ」(2022年9月〜2023年3月ごろ)で仕組みや技術の社会実装に向けた検証を行う予定である。

 実証フェーズでの具体的な取り組みについて、稲垣氏は現時点で明かせない部分も多いとしつつ、「10前後の異なるGHG排出量見える化ソリューション間での接続テストを行うことになる。実際にソリューションのユーザーとなる企業も実証試験に参加して、受け取ったデータを他のサプライヤーに渡すところまで検証する予定だ」と説明する。

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