ヘテロジニアスなエッジAIプロセッサの量産開始、2023年後半に:人工知能ニュース(2/2 ページ)
ArchiTekは2022年9月15日、エッジでの多様なデータ処理に対応するために、異なる種類のプロセッサを混載したヘテロジニアスなアーキテクチャの量産を2023年後半に開始することを発表した。さまざまな用途での活用が期待されているが、まずはカメラと組み合わせた転倒検知や人数確認など、見守り用途やサイネージ用途での展開を進めていく。
第3世代で量産へ、第2世代の5倍の性能
AiOnIcの第1世代(コードネーム:arima)モデルの開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトとして、ソシオネクスト、豊田自動織機と行った。ここで、電力効率が汎用GPUの10倍以上、処理時間は汎用CPUの20分の1という結果を達成している。
ArchiTekオリジナル製品としては、2020年に第2世代モデル(コードネーム:beppu)を開発。TSMCの12nm FinFETプロセスに実装した試作チップで、画像処理およびAI推論のデモやPoC(概念実証)を行ってきた。「beppu」を搭載したカメラPoCユニットなども用意し、さまざまな展示会などで紹介し、実際の用途開拓などを行ってきた。
今回発表した量産向けの第3世代モデルが「chichibu」だ。プロセスは「beppu」と同じTSMCの12nm FinFETを採用するが、約5倍のAI性能を実現。また、内蔵エンジンの1つとして新たにRISC-Vを実装した。2023年上半期にサンプル品、下半期に量産品をリリース予定としている。ちなみに各開発コードネームは頭文字がABC順となる国内の温泉地から決めたとしている。
開発ソフトウェア環境の整備も進めており、ヘテロジニアスプログラミングを可能にする環境に対応予定としている。また、第2世代まではOSを搭載していなかったが、Yoctoを採用しLinux OSを搭載予定だとしている。言語についてもPythonに対応する。
提供モジュールとしては、第2世代と同様組み込み用カメラアプリキットを用意する他、用途開拓を進めるために、汎用シングルボードなども計画する。
サイネージとの組み合わせで引き合いが拡大
利用用途としては、駅構内の危険防止など、カメラと組み合わせた監視サービス向けのエッジデバイスとしての活用や、介護施設の見守り用途で転倒検知機能などと組み合わせた提供やホームセキュリティ製品の組み込み用途などを想定しているという。
ArchiTek 取締役CMOの黒田剛毅氏は「基本的には特定の業種や業界にフォーカスしているわけではなくAIの技術やライブラリーをどういう用途に幅広く展開できるかをさまざまな方向性で検討している。姿勢推定や転倒検知、人数確認などAIを組み合わせてエッジで実現できる価値を訴えているが、最近では店舗のサイネージの反応などを把握したいというような引き合いが多い」と語っている。
2022年6月には米国シリコンバレーに拠点を設置し、海外向けの事業開拓も開始。サービス事業者、SIer、AIアルゴリズム開発会社、セットメーカー、モジュールメーカー、センサーメーカーなど幅広いパートナーも募集していく。
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