オーストラリアのデジタルメンタルヘルスを支えるゲーミフィケーション:海外医療技術トレンド(87)(1/4 ページ)
本連載第31回で、オーストラリアのデジタルヘルス施策を取り上げたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)緊急対応期を経て、メンタルヘルス領域のデジタルイノベーションが活発化している。
本連載第31回で、オーストラリアのデジタルヘルス施策を取り上げたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)緊急対応期を経て、メンタルヘルス領域のデジタルイノベーションが活発化している。
メンタルヘルス強化を国家戦略の柱に位置付けるオーストラリア
オーストラリアでは、毎年3000人以上が自殺により命を失っており、15〜44歳では死因の上位を占めている。加えて、同国民の5人に1人は毎年精神疾患を経験しているという。
このような背景から、オーストラリア連邦政府は、2021〜2022会計年度より、メンタルヘルス・自殺防止システムの重要な構造改革に着手した。2021年5月11日には、オーストラリア保健・高齢者ケア省が、「国家メンタルヘルス・自殺防止計画」(関連情報)を公表している。
同計画は、以下の5つの柱から構成される。
- 予防と早期介入
- 自殺の防止
- 治療
- 脆弱性のある人に対する支援
- 労働力とガバナンス
そして、メンタルヘルスケアを根本から変革するために、オーストラリア連邦政府は、以下のような施策を講じるとしている。
- 大人と子ども向けのHead to Healthや若者向けのHeadspaceプログラムを通じて、大人、若者、子どものための学際的なメンタルヘルスセンターネットワークを創設する
- オーストラリア市民がメンタルヘルスの課題に取組む際に役立てるために、技術力を生かした世界水準のHead to Healthデジタルプラットフォームを構築する
- メンタルヘルス・自殺防止システムが、救急部門や保健サービスにとどまらず、オーストラリア市民が働き、学習し、生活する場所にリーチすることを保証する
- 一般医(GP)を支援し、消費者および介護者の関与を強化し、オーストラリア市民が新しい革新的なタイプのケアにアクセスできるようにメディケアサービスを拡張することによって、プライマリーケアにおけるメンタルヘルスケアを強化する
- 組み合わせて、探しやすく、患者にフォーカスしたものであることを保証するために、学際的なチーム、ケア調整、一貫した受け入れ相談・評価ツール、システムにおけるより大規模なデータ収集と継続的評価を組み込む
- 自殺未遂の後に医療施設から退院する全てのオーストラリア市民に、コミュニティーにおいて、適切で継続的なフォローアップケアを提供する
- リソースが真に人間中心のケア提供に投資されるように、システムの効率性を向上させる
これらの中で、Head to Health(関連情報)については、図1に示す通り、保健・高齢者ケア省がデジタルメンタルヘルスサービス関連リソース集(アプリケーション、オンラインプログラム、オンラインフォーラム、電話サービス、デジタル情報リソースなどを含む)をWebサイトで提供している。
図1 オーストラリア保健・高齢者ケア省「Head to Health」(2022年9月1日時点)[クリックで拡大] 出所:Australian Government Department of Health and Aged Care「Head to Health」(2022年9月1日時点)
Head to Healthは、各州・地域単位の保健施策にも組み込まれている。例えば、本連載第34回で取り上げたビクトリア州では、メルボルンなど州内各地域にあるプライマリーヘルスネットワーク(PHN)がHead to Healthの地域ハブとして機能している(関連情報)。図2は、北西メルボルン・プライマリーヘルスネットワーク(NWMPHN)が提供する、Head to Healthを組み込んだ「My mental health」サービスの事例である。
図2 北西メルボルン・プライマリーヘルスネットワーク「My mental health」(2022年9月1日時点)[クリックで拡大] 出所:North Western Melbourne Primary Health Network (NWMPHN)「My mental health」(2022年9月1日時点)
参考までにNWMPHNは、第34回で紹介したメルボルン大学系列の王立子ども病院(RCH)と共同で、子どものメンタルヘルス支援コミュニティーを構築している(関連情報)。
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