ソニーとオリンパスの協業がさらに進化、“全部入り”外科手術用内視鏡を開発:医療機器ニュース(2/2 ページ)
ソニーとオリンパス、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズの3社は外科手術用内視鏡システムの新製品「VISERA ELITE III」を共同開発した。4K映像、3D立体視、IR観察、NBIなどの機能を1台に集約するとともに大幅な機能向上も果たすなど3社協業開発製品としてさらなる進化を果たしている。
一体化に加えて4つの機能向上も
VISERA ELITE IIIは単にVISERA 4K UHDとVISERA ELITE IIを一体化しただけではなく大幅な機能向上も図った。機能向上のポイントは大まかに分けて4つある。
1つ目は、4K映像を用いた観察における、より広い領域にピントが合う「EDOF(Extended Depth of Field:被写界深度の拡大)」とスコープの動きに合わせてフォーカスを自動調整する「C-AF(Continuous Auto Focus)」の搭載である。VISERA 4K UHDでは、高精細な4K映像を用いた観察が可能なものの、被写界深度が低いためフォーカス調整回数が増加するという課題があった。EDOFとC-AFを搭載するVISERA ELITE IIIの4Kカメラヘッドは、フォーカス調整の回数を低減させられるとともに、近景から遠景までより鮮明な画像取得が可能となり、医療従事者の疲労軽減や手術時間の短縮などにつなげられるという。
2つ目は、IR観察をフルカラーで行う機能を追加したことだ。従来のIR観察では、注入した蛍光薬剤が近赤外光(波長:700〜780nm)によって光る状態を見やすくするため、映像が全体的にマゼンダカラーとなる「IR+マゼンダ」と、背景がほぼ真っ黒になる白黒映像で蛍光薬剤の白色が際立つ「IR単独」という2つのモードがあった。VISERA ELITE IIIの高画質化処理技術を加えたフルカラーIR観察では、患部の周辺は通常時と同様の映像で観察できるとともに、蛍光薬剤によって光る臓器内の血管や腫瘍などの位置も分かりやすく把握できる。
これら1つ目と2つ目の機能向上では、ソニーがデジタル一眼カメラ「α」などで培った技術が大きな役割を果たしており、SOMEDがソニーとオリンパスの各要素技術と映像処理全体の最適化を図った。
3つ目は、4Kカメラヘッドの小型軽量化である。VISERA 4K UHDと比べて約3〜4%の軽量化を行うとともに、エルゴノミックデザインも採用して長時間手術の疲労低減を目指した。幅広い診療科で利用される外科手術用内視鏡システムの市場をよく知るオリンパスが仕様を定め、SOMEDが1つ目と2つ目の機能向上を盛り込みつつ小型軽量化も実現した。
4つ目は、ソニーの最新技術を盛り込んだ医療用モニターだ。4K映像だけでなく、3D立体視やIR観察などさまざまなモードでの表示を行う内視鏡に適した色表現と解像感のチューニングを施した。また、映像に合わせて明るさやコントラストを強調できるように、ソニー独自の画質向上技術「A.I.M.E(Advanced Image Multiple Enhancer)」を搭載するとともに、バックライト部分駆動技術も取り入れるなどして映像のダイナミックレンジを拡大し、視認性を大きく高めた。標準で搭載する32インチモニターの他、複数の医療従事者による内視鏡手術での利用などを想定した55インチモニターもオプションで用意している。
VISERA ELITE IIIは、VISERA 4K UHDとVISERA ELITE IIを1台に統合して機能向上も果たしているが、価格についてはVISERA ELITE IIの1割増程度に抑える方針。2022年9月の発売から7年間で約2万台の販売を目指す。
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