IoTデバイスの動作時間を左右する「出荷モード」と「ディープスリープモード」:IoT基礎解説(3/3 ページ)
本稿はIoTデバイスの電力効率を高めるパワーマネジメントのうち、消費電流がnAレベルとなる“ナノパワー”の「出荷モード」と「ディープスリープモード」の重要性について解説する。また、個別部品から成るディスクリートソリューションと機能を集積したICを用いる集積化ソリューションの比較も行う。
両ソリューションの性能比較
両ソリューションの性能比較は、固定デューティサイクルの下での動作時間で評価しました。バッテリーの動作時間は、平均負荷電流とバッテリー容量から、式(1)に基づいて計算できます。
平均負荷電流は、式(2)から導き出されるIoTデバイスのデューティサイクルを用いて、式(3)に基づいて計算できます。なお、アクティブ電流は、ワイヤレスセンサーノード全体が動作するときの消費電流です。
両ソリューションとも、IoTデバイスが2時間に1回ウェークアップし、特定のタスクを実行して、その後ディープスリープモードに入ると想定します。システムのアクティブ電流は5mAです。バッテリー動作時間は、動作のデューティサイクルによって変わります。図5は、デューティサイクルが0.005〜0.015%まで変化する場合について、2つのソリューションのバッテリー動作時間を示しています。
仕様 | ディスクリートソリューション | 集積化ソリューション |
---|---|---|
コイン型電池の容量 | 250mAh | 250mAh |
シャットダウン電流 | 146nA | 30nA |
スリープ電流 | 170nA | 10nA |
IC数 | 3(RTC+負荷スイッチ+プッシュボタンコントローラー) | 1(MAX16163) |
水晶発振器 | 必要 | 不要 |
ソリューションサイズ | 130mm2(標準) | 50mm2(標準) |
表2 両ソリューションの比較 |
また表2にもある通り、集積化ソリューションの方が、シャットダウン電流やスリープ電流が小さく、バッテリー動作時間でも有利になることが分かります。0.007%のデューティサイクル動作では、バッテリー動作時間を約20%延長できています。ソリューションサイズも4割削減することが可能です。
筆者プロフィール
Suryash Rai氏は、2016年からアナログ・デバイセズでアプリケーション・エンジニアとして勤務し、保護ICポートフォリオを担当している。インド国立工科大学カルナタカ校(NITKスラスカール)で通信工学の修士号を取得。カリフォルニア州サンノゼ在住で、料理、旅行、新しい友人たちとの出会いを楽しんでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- IoTデバイスに不可欠な「アンテナ」「無線モジュール」「SIMカード」の役割
IoTデバイスの基本的な構成から、必要な認証、デバイス選定までを前後編で解説する本連載。前編では、基本的な構成の中でも、通信に関する機能を持つ「アンテナ」「無線モジュール」「SIMカード」について詳しく解説する。 - IoTデバイスにも必須の「技適」とは何か、どんなデバイスを選ぶべきか
IoTデバイスの基本的な構成から、必要な認証、デバイス選定までを前後編で解説する本連載。後編では、IoTデバイスを日本国内で使うために必要な認証いわゆる“技適”についての解説を行った上で、目的に応じてどのようなデバイスを選定していくべきかについて紹介する。 - IoTを軸に製造業DXを進める4つのステージ、そしてはじめの一歩
製造業でも求められるようになっているDX(デジタルトランスフォーメーション)。本稿では、IoTを軸とした製造業におけるDXの進め方を4つのステージに分けて解説する。また、製造業DXのはじめの一歩となるIoTで効果を得るための2つのポイントも紹介する。 - いまさら聞けないeSIM入門
セルラー通信の進化や利用シーンの拡大に応じてさまざまなSIMが登場している。本稿では、SIMの中でも、最近話題となっている「eSIM」について、その概要や利点だけでなく、実際に製品に組み込むために必要な知識を紹介する。 - 工場におけるCBMの実現に向け、アナログ・デバイセズとマクニカが共同提案
アナログ・デバイセズは、「FOOMA JAPAN 2022(国際食品工業展)」において、マクニカと共同で国内向けに展開しているCBM(状態基準保全)ソリューションを展示した。 - ミリ波レーダーで振動の非接触測定を実現、故障を予知する「CbM」向けに展開
アナログ・デバイセズがモーターなどの振動の変化から不具合発生を事前に検知できるCbM(状態基準保全)用のミリ波レーダー「miRadar CbM」について説明。さまざまなレーダー製品を手掛けるサクラテックと共同開発したもので、CbMで広く用いられている加速度センサーを搭載する振動計と異なり、非接触で振動を計測できる点が最大の特徴となる。