IoTデバイスの動作時間を左右する「出荷モード」と「ディープスリープモード」:IoT基礎解説(2/3 ページ)
本稿はIoTデバイスの電力効率を高めるパワーマネジメントのうち、消費電流がnAレベルとなる“ナノパワー”の「出荷モード」と「ディープスリープモード」の重要性について解説する。また、個別部品から成るディスクリートソリューションと機能を集積したICを用いる集積化ソリューションの比較も行う。
ディスクリートソリューションと集積化ICソリューション
IoTデバイスの消費電流を最も小さく抑えているのは、出荷モードとディープスリープモードです。これまで、出荷モードとディープスリープモードのオン/オフには、負荷スイッチとRTCが用いられてきました。この手法では、負荷スイッチとRTCのみがアクティブであり、総自己消費電流はnAレベルに低減されます。プッシュボタンコントローラーを負荷スイッチに接続しておけば、出荷モード機能を有効にすることができます(図2)。
先述した通り、外部プッシュボタンを押せば出荷モードは終了し、ワイヤレスセンサーノードは通常動作を開始します。また、ディープスリープモードのスリープ時間は、ワイヤレスセンサーノード内のマイクロコントローラーによってプログラムできます。
出荷モードとディープスリープモードは、個別部品から成るディスクリートソリューションでも実現できますが、機能を集積した専用のICも存在します。例えば、アナログ・デバイセズのナノパワーコントローラー「MAX16163/MAX16164」は、オン/オフコントローラーとプログラマブルスリープ機能を備えるとともに、出力をゲートするためのパワースイッチも内蔵されており、最大200mAの負荷電流を供給します(図3)。
ディスクリートソリューションの構成
ディスクリートソリューションと集積ICを用いたソリューションでは、出荷モードとディープスリープモードの消費電流も大きく変わってきます。そこで、アナログ・デバイセズ製ICを用いて、ディスクリートソリューションと集積ICソリューションの消費電流を比較してみました。
まず、集積ICソリューションは先ほど紹介したMAX16163を使用します。ディスクリートソリューションについては、RTCに自己消費電流が業界最小クラスの「MAX31342」を、プッシュボタンコントローラーは「MAX16150」を、負荷スイッチは「TPS22916」を採用しました。RTCはI2C通信を介してプログラムされており、IoTデバイスのスリープ時間に設定されています。タイマーが切れると、割り込み信号がMAX16150のPBINピンをプルダウンします。このデバイスはOUTをハイに設定して負荷スイッチをオンにします。ディープスリープモードでは、MAX31342、MAX16150、TPS22916のみが電力を消費します(表1、図4)。
機能ブロック | 部品名 | スリープ・モード電流(nA、typ) | シャットダウン電流(nA、typ) |
---|---|---|---|
RTC | MAX31342 | 150 | 6 |
負荷スイッチ | TPS22916 | 10 | 10 |
プッシュボタンコントローラー | MAX16150 | 10 | 10 |
総システム電流 | 170 | 26 | |
表1 ディスクリートソリューションのブロック別の消費電流 |
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