地政学リスクによる製造業への影響、今求められる“必要な打ち手”とは?:メカ設計ニュース(1/2 ページ)
キャディは、地政学リスクなどによる製造業への影響調査の結果と事業戦略に関する記者説明会を開催。調査結果のサマリーとともに、地政学リスクによる製造業への影響に対する“必要な打ち手”について、同社 代表取締役の加藤勇志郎氏が解説した。
キャディは2022年9月5日、地政学リスクなどによる製造業への影響調査の結果と事業戦略に関する記者説明会を開催した。
2022年以降、ロシアによるウクライナ侵攻や中国のゼロコロナ政策(ロックダウン)などの地政学リスク/社会情勢などに起因して、多くのメーカーが材料や部品の供給不足に陥ったり、物流網が混乱したりなどの影響を受けている。
このような状況を踏まえ、同社は「地政学リスクによる製造業(食品・繊維・化学は除く)サプライチェーン・調達への影響調査」と題し、製造業の経営層や調達/購買担当者などを対象に、サプライチェーンの混乱による影響や対応状況、今後の見立てなどについて調査を実施した。調査はインターネット形式で行われ、調査期間は2022年8月19〜23日、有効回答数は3727人。
地政学リスクによるサプライチェーン/調達への影響が浮き彫りに
同社 代表取締役の加藤勇志郎氏は「ウクライナ情勢などの地政学リスクによる売り上げや利益への影響は80%以上の企業で起こっていることが分かった。値上げに応じたり、大きな意思決定をしたりしても必要な部品などの数量を実際に確保し切れている企業は20%程度しかないという、かなり危機的な状況になっていることが今回の調査結果から読み取れる」と語る。
サプライチェーンの中で最も影響を受けた活動に関しては、70%弱の回答者が「海外からの調達」と答え、影響を与えた要因として「中国のロックダウン」(73.9%)や「ウクライナ問題」(66.4%)を挙げる声が多かったという。
また、調達品への影響に目を向けてみると、80%以上の回答者が「価格高騰」を挙げ、以降「納期遅延」や「供給制約」が次いでいる。
そして、部品などの調達難に直面し、実際に“検討”を行った対応策については「代替部品への切り替え・仕様変更」(50.2%)が最多回答となり、次いで「調達価格の値上げに応じる」(47.9%)の声が多かった。また、“実行”した対応策も同様の結果で「代替部品への切り替え・仕様変更」が47.4%、「調達価格の値上げに応じる」が43.4%という結果となった。
ただし、実行した対応策の“完了”状況(完了率)を見てみると、50%台がほとんどを占める結果となり、「まだ多くの企業でかなりの対応に追われている状況にあることが見て取れる」(加藤氏)。
さらに、値上げへの対応については、材料および購入部品(メカ/電気)で70%以上が「応じた」と回答したものの、数量確保の状況について「しっかりと確保できた」との回答は、最も多かった金属加工品でも20%台にとどまり、電気部品においては10%を切る結果(6.7%)となった。
2022年現在、調達/購買で重視している観点に関しては、2018年の調査で最多だった「調達原価の低減」が2020年、2022年ともに40%未満となり、「調達先・生産キャパシティーの確保」や「納期順守」が上回る結果となった。特に「調達先・生産キャパシティーの確保」に関しては、2018年の調査で16.8%だったのに対し、2022年の調査では38.6%と大きく伸ばしている。また、2020年比で大きく伸ばしたのは「最適な安全在庫の設定」であったという。
「従来、調達ではQCD(品質、価格、納期)が重要とされてきたが、それよりもキャパシティーを確保することを重視する方向になってきている。また、これまで在庫を持たざる経営が良いとされてきたが、在庫を持つ経営に意識が変わってきていることも今回の調査で分かってきた」(加藤氏)
そして、自社の調達/購買の方針や戦略を中長期的に見直す必要性を感じるかという問いに対し、全社目線で施策検討を行う機会の多い、部長/工場長クラス以上の回答は「感じる」が64.6%、「強く感じる」が27.1%となり、90%以上が見直しの必要性を感じているという結果となった。
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