東芝が「信頼できるAI」の提供へ、MLOpsと利用者目線の品質カードを活用:人工知能ニュース(2/2 ページ)
東芝は、AIに対する理念を7つの観点でまとめた「東芝グループAIガバナンスステートメント」を発表した。同ステートメントを基盤として、人材育成や、MLOpsにAI品質保証の仕組みを取り入れるなどして、信頼できるAIシステムの開発、提供、運用を推していく方針である。
MLOpsとAI品質保証の組み合わせでAIシステムの品質を保つ
AIガバナンスステートメントと合わせて発表されたのが、AIシステムの品質を保つ仕組みとなるMLOpsとAI品質保証の組み合わせである。
AIシステムは従来システムと比べて、運用時の環境変化による性能への影響があるため一度開発して終わりにはならない。そのために東芝がAI技術開発の一環として注力してきたのが、AIモデルの性能をモニタリングし、更新によって性能を保つMLOpsである。
また、統計学に基づくAIシステムは、100%の正解がないことから品質保証に対する考え方も異なってくる。そこで東芝におけるAI品質保証では、AIシステムの開発における考え方ややるべきことを整理した「AI品質保証ガイドライン」と、必要な作業や作成すべき成果物で漏れのないプロセスを整備した「AI品質保証プロセス」を策定した。
併せて、どうしても開発者目線になりがちなAI品質保証について、利用者目線で重要ポイントを整理した「品質カード」を用いることで、利用者から見えにくいAI品質を可視化する取り組みを進めている。この品質カードは、AI品質保証プロセスで規定される品質チェックリストに対応して、データ品質やモデル品質、システム品質それぞれについてのカードを利用者に提供することになる。
なお、AIガバナンスを構成するAI人材育成でも、2022年度の目標2000人に対して2022年8月末時点で2100人となっており、前倒しで達成している。今後は、今回発表したAIガバナンスステートメントに代表される「信頼できるAI」への取り組みを強化するため、AIリテラシーを持った人材の“幅”の拡大に注力する。2022年8月23日には、マネジャー層向けAIリテラシー講座を初回開催しており、今後は東芝グループの全従業員向けの講座も開発していく方針である。
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