アップルカーではなくVPPで生きる、東芝の「インダストリアルAI」:人工知能ニュース(1/2 ページ)
東芝は同社が注力するインフラサービスなどで力を発揮するAI技術「インダストリアルAI」の取り組みについて説明。「50年以上の歴史を持ち、世界3位、国内1位のAI特許出願数を誇る東芝のAI技術をインフラサービス向けに積極的に展開していく」(同社 執行役員 首席技監の堀修氏)という。
東芝は2021年3月23日、オンラインで会見を開き、同社が注力するインフラサービスなどで力を発揮するAI(人工知能)技術「インダストリアルAI」の取り組みについて説明した。「50年以上の歴史を持ち、世界3位、国内1位のAI特許出願数を誇る東芝のAI技術をインフラサービス向けに積極的に展開していく」(同社 執行役員 首席技監の堀修氏)という。
1950年代後半〜1970年に第1次ブームを迎えたAIだが、東芝はそのころからAIの研究開発を行っている。この第1次AIブームのときに開発し1967年に商用化されたのが、世界初となる郵便番号自動読み取り区分機である。それ以降、1980〜1995年の第2次、2010年以降現在も続く第3次とAIのはやりすたりがある中で、東芝はAIの研究開発をたゆまず継続してきた。そして現在は、これらさまざまなAIの研究開発成果が、東芝デジタルソリューションズによって、コミュニケーションAIの「RECAIUS(リカイアス)」、アナリティクスAIの「SATLYS(サトリス)」という形で製品展開されている。
堀氏は「東芝のAIの研究開発力を示すのがWIPO(世界知的所有権機関)によるAI特許のランキングだ。当社は、広範なAI技術で画像、音声、音響、テキスト、時系列データなどをカバーし、1950年〜2018年3月までのAI特許出願数では、世界で3位、国内では1位という実績がある」と強調する。
東芝は、リアルとデジタルがより緊密に連携するCPS(サイバーフィジカルシステム)を成長エンジンとする「CPSテクノロジー企業」を掲げており、このCPSの中でAIは重要な役割を果たしている。サイバー空間内となるクラウドなどでAI処理を行うだけでなく、よりフィジカル空間に近いエッジデバイスを用いたAIハードウェアの活用も東芝が重視するところだ。
堀氏は、CPSにおけるAIの役割を3段階に分けて説明した。例えば工場であれば、まずは、人に異常や歩留まり、効率などを明確に伝えるための「見える化」でAIが用いられる。次に、人とAIが協調する形で復旧や異常発生防止を実現する「原因分析・予測」が可能になる。そして、AIとロボットの連携により異常発生を自動で回避する「自動最適制御」に進化できる。
「インダストリーのDXではモノのデジタル化が必要」
では、東芝が自身の強みとするインダストリアルAIとはどういうものなのだろうか。ここで堀氏が取り上げたのが、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)が強みを発揮しているWeb世界とインダストリー(産業分野)におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の相違である。「Web世界のDXはかなり進んでいるが、これから求められるインダストリー(産業分野)のDXではモノのデジタル化が必要になる。話題の“アップルカー”も、Webデータに人やモノをつなげるという意味ではWeb世界のDXだ。しかし、複数の発電所を連携して1つの発電所のように扱える仮想発電プラント(VPP)などに求められるモノのデジタル化では、当社が持つドメイン知識が役立つ」(堀氏)という。
このドメイン知識の重要性はWebデータとインダストリアルデータの違いからも説明できる。Webデータの多くは既に意味付けが行われているが、インダストリアルデータの多くはセンサーデータや機器データなどの信号データであり、ほとんどが意味付けされていない。そして、例えば故障の原因とその故障の予兆を知らせる信号データをひも付けたいとして、意味付けされていない信号データと原因を結び付けてくれるのがドメイン知識というわけだ。
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