ジェイテクトが「鬼ベアリング」で自転車用軸受に参入、大幅な低トルク化を実現:組み込み開発ニュース
ジェイテクトは、市販向け軸受の新商品となるロードバイク用高性能セラミックボール軸受を投入し、自転車用軸受市場に本格参入すると発表した。「鬼ベアリング(ONI BEARING)」のブランド名称で展開する方針で、2022年8月20日に販売を開始する。
ジェイテクトは2022年8月10日、市販向け軸受の新商品となるロードバイク用高性能セラミックボール軸受を投入し、自転車用軸受市場に本格参入すると発表した。「鬼ベアリング(ONI BEARING)」のブランド名称で展開する方針で、同月20日にスポーツサイクル専門店Y's Road(ワイズロード)の大阪本館と名古屋本館で販売を開始する。まずは限定30セットの販売を予定しており、価格(税込み)はフロントとリアの軸受と工賃を含めて12万円。
鬼ベアリングは、ジェイテクトが1984年に世界で初めて実用化したセラミックボール軸受の技術を結集するとともに、自動車/産業機械分野で積み重ねてきた知見を生かして開発した自転車用軸受である。既存のロードバイク用軸受と比べて大幅な低トルク化を実現し、漕ぎ出しの軽さとホイール速度の維持を実現したとする。例えば、ロードバイクに組み込まれているオリジナルの軸受と比べて10分の1以下、競合のロードバイク用セラミックボール軸受と比べても3分の1以下にトルクを抑えている。強度についても、セラミック特殊加工を施すことで特殊加工のない場合と比べて1.5倍に高め、競合比でも10%向上できているとする。寿命も、競合と同等のオリジナル比1.5倍を実現している。
この低トルク性能が評価され、国内のロードバイクレーシングチーム「MATRIX POWERTAG(マトリックスパワータグ)」のレース車両で、鬼ベアリングの試作品が採用された。同チームの選手から「桁違いに軽い。特にコーナーの立ち上がりに軽快さがある」などの好評を得ているという。なお、鬼ベアリングのブランド名称の由来は、ジェイテクトのグループビジョンである「No.1&Only One」から“ONI”を取るとともに、セラミックボール軸受としての極めて高い性能と自転車競技の本場欧州への日本ブランドアピールも込めて採用した。
販売を行うY's Roadの大阪本館と名古屋本館では、Mavic(マヴィック)製ホイールの現行モデル(COSMIC、KSYRIUM)にオプションで鬼ベアリングを搭載することができる。購入者はホイールのハブに「ONI BEARING」のロゴを付けることも可能だ。
2022年8月20〜21日に、鈴鹿サーキットで開催されるロードレース「第37回シマノ鈴鹿ロード」にイベント出展するなど、今後もロードレース会場での体験会や試乗会などを実施する予定である。また、今回発売するフロントホイール用、リアホイール用だけでなく、ペダル周辺のクランク用軸受、変速機周りのプーリー用軸受にも領域を広げるとともに、「ベアリング交換キット」とのセット販売なども行うなどして、自転車用軸受の本格的な事業化を目指す方針だ。
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