人とロボットが織りなす未来の社会とは 大阪大学教授 石黒浩氏が描く進化の姿:3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022(3/3 ページ)
ダッソー・システムズでは2022年7月6〜26日まで、オンラインで年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022」を開催した。本稿では基調講演の中から、大阪大学 基礎工学研究科 教授(栄誉教授)の石黒浩氏による講演「人とロボットと未来社会」の内容をお届けする。
今の価値観で未来を制約すべきではない
そういうアバターが作る世界を石黒氏は「仮想化実世界」と呼んでいる。実世界において生身の体で働いていると、失敗したときに取り返しがつかなくなる可能性がある。一方、インターネットの仮想世界では、失敗しても別のアカウントを作ってやり直すことができる。
ただし、多くの経済活動は実世界で行われている。「実世界と仮想世界のメリットを融合できないかと考えたのが仮想化実世界。実世界で働きながら、アバターを使って匿名性を持たせ、いろんな自分で働けるようにする」(石黒氏)。
倫理的な懸念も考えられるが、石黒氏は「まずは市場を作ること。市場ができる前に、まだ見ぬ世界の倫理問題を考えて抑制することは決してやってはいけない。今の価値観で未来を制約すれば何も生まれない」と力を込める。
大阪万博では未来の人間の進化を共有
石黒氏は、仮想化実世界が日本で作り出せる可能性が高いという。なぜなら、日本はアバターに必要なロボット技術やCGのキャラクター制作に強いからだ。「日本から新しい世界を作りたい」(石黒氏)。2021年にCGのアバターを作るAVITAを設立、代表取締役CEOに就任し、アバターの社会実装に自ら取り組んでいる。
「PCやスマートフォンでCGのアバターを使って働ける環境を作り、普及したら付加価値が高いものはロボットに置き換える。アバターで人の可能性を広げる社会を多くの企業と一緒に実現できればうれしい」(石黒氏)
石黒氏は2025年に大阪府の夢洲で開催される大阪・関西万博において、テーマ「いのちを拡げる」のプロデューサーに就いている。「50年先にわれわれ人間はどれほど進化しているのかを皆さんと共有したい」(石黒氏)。アバターの技術もふんだんに使う予定で、「コロナ禍後の国際イベントの在り方を示したい。誰もが自由に参加できる万博にすることが重要だ」。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- SDGsを成長と未来への基盤づくりの機会に、ダッソーが示す製造業のあるべき姿
ダッソー・システムズは年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022」をオンラインで開催(会期:2022年7月6〜26日)。本稿では、基調講演の中から同社 代表取締役社長のフィリップ・ゴドブ氏の講演「新たな視界から、世界と向き合う」の内容をお届けする。 - サステナビリティの促進に貢献するバーチャルツイン
ダッソー・システムズは年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022」をオンラインで開催(会期:2022年7月6〜26日)。本稿では、基調講演の中から同社 技術部 ディレクターのセバスチャン・カーデット氏の講演「バーチャルツインが加速する持続可能な世界」の内容をお届けする。 - ルアー開発に「CATIA」を活用するジャッカル、直感的かつ数値的な操作が“肝”
ダッソー・システムズは年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022」をオンラインで開催(会期:2022年7月6〜26日)。本稿では、ユーザー事例講演の中から、滋賀県の釣り具メーカーであるジャッカルの講演「Imagine&Shapeを活用した釣り用ルアーの開発事例」の内容をお届けする。 - キックボード開発を通じてプラットフォームの価値を身をもって体験
「3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2021」の基調講演に、ソリッドワークス・ジャパンの大坪陽介氏が登壇。「リモート設計環境の理想!? SOLIDWORKS×3DEXPERIENCEの設計から製造までを追ってみた!」と題し、SOLIDWORKS Japan User Groupのリーダー9人が実際に取り組んだ、SOLIDWORKSおよび3DEXPERIENCEプラットフォームを活用したキックボード開発プロジェクトの模様を紹介した。 - アシックスの未来体験型施設でクラウド版3DEXPERIENCE CATIAを活用
ダッソー・システムズは、アシックスが期間限定でオープンした体験型施設「ASICS EXPERIENCE TOKYO」において、同社の「3DEXPERIENCEプラットフォーム」が採用されたことを発表した。 - トヨタが挑戦する3Dプリンタ×ジェネレーティブデザインによる次世代モノづくり
ダッソー・システムズ主催のオンライン年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2021」において、「ジェネレーティブデザインの検討事例」と題し、トヨタ自動車の取り組みを紹介する業界別セッションが行われた。トヨタ自動車はなぜ「Function Driven Generative Designer」を導入したのか。その背景や狙いについて語られた。