ルアー開発に「CATIA」を活用するジャッカル、直感的かつ数値的な操作が“肝”:3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022(1/2 ページ)
ダッソー・システムズは年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022」をオンラインで開催(会期:2022年7月6〜26日)。本稿では、ユーザー事例講演の中から、滋賀県の釣り具メーカーであるジャッカルの講演「Imagine&Shapeを活用した釣り用ルアーの開発事例」の内容をお届けする。
ダッソー・システムズは2022年7月6〜26日までの期間、年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022」をオンラインで開催。“SDGs時代のものづくり 〜バーチャルツインでつながる、持続可能なイノベーション”をテーマに、基調講演の他、ドメイン別/インダストリアル別の約60ものセッションを展開し、同社の取り組みや戦略に加え、ユーザー事例講演など多数の情報発信が行われた。
本稿では、[消費財]ユーザー事例講演の中から、滋賀県の釣り具メーカーであるジャッカルの講演「Imagine&Shapeを活用した釣り用ルアーの開発事例」の内容をお届けする。
釣り具メーカーのジャッカルの製品開発を支える「CATIA」
1999年創業のジャッカルは琵琶湖沿い(滋賀県大津市)に社屋を構える釣り具メーカーである。淡水から海水まで幅広い釣種に対応した製品、プロ向け、入門者向け、さらにはアウトドア向けなどボーダーレスな製品の企画、開発、製造、販売を手掛けている。新製品の開発も積極的に行っており、時代の流れやトレンドの移り変わりとともにその時代にあった新製品を絶えず作り続けている。その結果、「歴代製品数は1400点以上に上り、ルアーだけでも年間新規アイテム数が40点以上、年間新規金型数で90型以上になる」(ジャッカル 企画開発部 樋口祐太朗氏)。
そして、こうしたジャッカルの絶え間ない新製品開発、金型設計を支えているのがダッソー・システムズのハイエンド3D CAD「CATIA」だという。
ルアーに代表される釣り具は、人間が肉眼で確認できない水中で使用され、魚という生き物を相手にする道具であるため、その開発においては、実物サンプルを用いたテストが非常に重要となる。樋口氏は「実物サンプルを使用したテストでトライ&エラーを回して、少しずつ正解に近づけていく過程が欠かせない」とルアー開発の難しさを語る。
このトライ&エラーのサイクルを効率良く回していくために活用されているのが、CATIAだ。実物サンプルの製作においては、CATIAで3Dモデルを作成した後、それをすぐに切削加工機や3Dプリンタで加工/出力することで、試作開発の効率化を図っている。この過程で微調整を行いながら、製品のクオリティーアップと製品開発期間の短縮にもつなげている。
ルアー開発に欠かせない直感的な操作と数値的な操作を可能に
ルアーの開発において、特に役立っているのがCATIAのサーフェスモデリング機能「Imagine&Shape」だという。ジャッカル 企画開発部 塚本泰光氏は「ルアーに求められる生物的な意匠表現を得意としながら、数値的な微調整をかけることができる点でCATIAのImagine&Shapeはルアーづくりに非常にマッチしている」と語る。
ジャッカルでは、ルアーの性能だけでなく意匠の追求にも力を入れている。例えば、フェースにわずかな凹凸を与えるだけでもルアーの表情は大きく変化する。CATIAであればこうした変化をアニメーションでリアルタイムに確認することが可能だ。また、マウス操作によって制御点を直感的に移動させることで、設計者の感性を3Dモデルにダイレクトに反映できる。「いろいろな角度から確認し、微調整を行いながらさまざまな表情を作り込むことで、お客さまに満足していただける造形美の実現を目指している」(塚本氏)。
このような直感的な操作とともに、ルアー開発で役立てられているのが数値的な操作だ。ルアーは外見上、生物的な意匠であるため、それほど数値的に細かく設計を詰めていく必要がないと思われるかもしれないが、実はボディーをわずかにヤスリで削っただけでも挙動が大きく変わる。このような緻密な造形を、再現性をもって量産型まで落とし込んでいく過程で、この数値的な操作性が非常に役立っているという。
講演では「CATIA V5」を使用したルアーの設計の様子(Imagine&Shapeによる直感的な操作と数値的な操作)をデモ映像で紹介した。
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