ロボット運用に最適なフィジカルセキュリティの考え方:ロボットセキュリティ最前線(5)(3/3 ページ)
ロボットの利用領域拡大が進む一方で、ネットワーク化が進むこれらのロボットのセキュリティ対策については十分に検討されているとはいえない状況だ。本連載ではこうしたロボットセキュリティの最前線を取り上げてきた。第5回となる今回は「既にできている」と考えられて見過ごされがちなフィジカルセキュリティの考え方について紹介する。
データ連携で実現できること
フィジカルセキュリティは、その根幹となる監視カメラと入退室制御だけの領域だけでなく、ビル設備全般や、さらには都市全体を支えるツールとしてその役割が大きく変わりつつある。技術進化の背景としては、サイロ化されていたプロトコルの国際標準化への動きや、IoT(モノのインターネット)デバイスを含む各種センサーのIPネットワークへの対応、オープン型アーキテクチャに基づいた開発環境、各種データを集積できるデータプラットフォーム化への動きなどが挙げられる。
これらの背景によりフィジカルセキュリティはさまざまなデータが取り扱える様になったことで単純なシステムの領域から施設や都市全体を管理できるプラットフォームへと進化したといえる。ロボットについてもフィジカルセキュリティを構成する1つの要素としてフィジカルセキュリティプラットフォームに組み込むことで、さまざまな要素と連携が可能になり、今まで以上の活用方法が期待できる。
具体的にフィジカルセキュリティプラットフォームにロボットを組み込むことでさまざまなシステム連携を実現でき、さまざまな価値を創出できる。例えば、以下のような点が考えられる。
入退室との連携
入退室システムの運用状況データを細部まで連携することで、各入退室区画の利用状況、滞在人数、扉の施解錠状況を瞬時に取得できる。これにより特定の人が入室した場合や特定の人数に達した場合などの条件付けなどが可能になり、ロボットの運用におけるルールを細部まで自動化できる。
監視カメラとの連携
各施設に設置されている監視カメラを外部センサーとして用い、映像データを基に障害物と人とロボットの位置を解析、最適な走行ルートの計算を行う。
各種センサーデータとの連携
温湿度センサー、CO2センサー、照度センサーなどの各種センサーの数値情報を連携し、ある一定の数値に到達した場合に特定の動作をさせることで、より詳細なロボット運用ポリシーを実装することが可能となる。
警備業務との連携
普段運用しているロボットの各種センサーデータ(カメラや位置情報センサーなど)をフィジカルセキュリティの1つのメインストリームデータとして取り扱い、警備業務に利活用できる。無人拠点の警備巡回業務の機械化、普段人が立ち入ることが困難な危険場所内で事故が発生した場合の現場派遣など、人だけでは対応が困難な場所で活用することができ、より安全な生活基盤を作ることが期待できる。
今後の展望
ロボットと人々が共存する世界において、フィジカルセキュリティとロボットの融合は必要不可欠であり、相互連携を行うことでより有用な活用が期待できる。現段階では複数のフィジカルセキュリティの要素を組み合わせるプラットフォーム化の動きについては具体的に議論が進んでおらず、ロボットと人が最適に共存できる環境整備まで至っていないのが現実だ。しかし、既にドローンなどを利用して警備業務を行っている実例があることから考察すると、まずは警備目的での利用から徐々にその用途が広がる可能性が高い。また、身近なところでサービスロボットが増え稼働している現在の状況を踏まえると、警備ロボットのみならず、ロボット全般における環境整備が急務であるといえる。
筆者紹介
佐々木 藏徳(ササキ クラノリ)
ネットワンシステムズ株式会社 セールスエンジニアリング本部 市場戦略部 エキスパート
フィジカルセキュリティを含むサーバ、ストレージ、OSのプラットフォーム基盤関連業務を経て、2016年ネットワンシステムズに入社。大手民間企業、重要インフラ施設の構築設計に多数関わっている。現在はフィジカルセキュリティ製品に関する市場戦略策定に従事。
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