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半導体産業に絡む円安の思惑、日本の半導体政策に掛かる期待モノづくり最前線レポート

インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2022年7月7日、オンラインとリアル会場のハイブリッドでセミナー「Infineon MCU Partner & Solution Day」を開催した。基調講演にはOmdia シニアコンサルティングディレクターの南川明氏が登壇し、「新たな成長期に入ったエレクトロニクス/半導体市況展望」と題して、今後の半導体産業に関する見通しなどを披露した。

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Omdia シニアコンサルティングディレクターの南川明氏
Omdia シニアコンサルティングディレクターの南川明氏

 インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2022年7月7日、オンラインとリアル会場のハイブリッドでセミナー「Infineon MCU Partner & Solution Day」を開催した。基調講演にはOmdia シニアコンサルティングディレクターの南川明氏が登壇し、「新たな成長期に入ったエレクトロニクス/半導体市況展望」と題して、今後の半導体産業に関する見通しなどを披露した。

エレクトロニクス産業には今がベストな為替

 南川氏はまず、マクロの経済環境から紹介した。直近の世界のGDP(国内総生産)成長率および民間最終消費費支出の落ち込みに触れ、「コロナ禍で電子機器の需要が増え、オーバーシュートしてしまった。そうなると必ず反動がある。それが2022年の後半。これから世界経済はもっとスローダウンするのではないか」と指摘する一方、「長く続くものではない。半年、1年経てば必ず上向く。次の大きな成長に向けた準備の期間」と表現した。

 加速する円安については、南川氏は購買力平価とドル円の為替レートの推移を見ながら、「製造業、特にエレクトロニクス産業にとっては、今が一番良いレート」と話した。過去の円高を踏まえて、「日本で作れなくなり、海外に工場を移した。140円前後をなんとかキープしようと日本政府、日本銀行も考えている。エレクトロニクス産業を復活させるためには、このレートが一番良いという考え方が政府にある」(同氏)と述べた。

 ロシアがウクライナに侵攻以降、中国による台湾侵攻の可能性も取り沙汰されている。南川氏は台湾が世界の半導体市場の70%、最先端の10nmより微細なプロセスに限れば台湾に本拠を置くTSMCが73%のシェアを持つことを示し、「アメリカは絶対に(侵攻を)阻止するだろう」と語った。台湾の企業関係者たちの見方としては「3年間は(台湾侵攻が)起こらないとみている。今回の問題で軍事力の定義が変わってしまった。中国は見直しをしている。ただ、習近平政権が続くのであれば、いずれ起こってもおかしくはないと考えている」(同氏)と語った。

EV、メタバース…今後も半導体産業が拡大

 長期的な世界の変化と半導体産業への影響も解説した。南川氏は過去半世紀変わらない大きなトレンドとして、人口増加、高齢化、都市への人口集中の3つを挙げた。

 1950年に25億人だった世界の人口は2021年には78億人と3倍に増加、「これがエネルギー、水、食料、医療の不足、環境問題を生み出している。コロナ禍でそれらの問題を解決する方向で世界が大きく舵を切り始めた。自動車ならEV(電気自動車)の推進、再生可能エネルギーへのシフト、省エネルギーのスマートファクトリーなどを国がドライブする」(南川氏)。

 それらに不可欠なのが、半導体の技術だ。南川氏は主要国を合わせると今後5年間にカーボンニュートラルのために500兆円が費やされるとし、その内、半導体関連だけで50兆円にのぼると試算、これまで年50兆円規模で推移してきた半導体市場に与える影響の大きさを示した。

 また、世界の電力の約半分はモーターを動かすために使われているといい、モーターの70%にはインバーターがまだ付いていないため、パワー半導体がさらに用いられると見込んだ。さらに南川氏が取り上げたのが仮想3次元空間のメタバースだ。

「GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon.com、Microsoft)などの大手IT企業が会社を挙げて取り組んでいる。会員制サービスの天井が見えてきて、メタバースでビジネスモデルを変えようとしている。これも半導体が支える。日本では、まだ先という声もあるが、そんなことはない」(南川氏)

日本の半導体産業政策を海外が注目

 自動車でも、EV化によって半導体の使用量が増える。「今のガソリン車は500ドル(約6万8000円)ほどの半導体を使っている。EVになれば1600ドル(約22万円)になる。テスラのEVは2500ドル(約34万円)使っている。同じ1台でも使用量がまったく違う」(南川氏)。

 従来、PCや液晶テレビ、スマートフォンなどの個人消費が支えた半導体市場が、これからは政府主導のDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)、データセンターへの投資で拡大する。南川氏は「今後の半導体産業は過去20年間より強い成長を遂げる」と見通す。

 最後に南川氏は、日本の半導体関連産業が世界から注目されていると語った。直近の1カ月ほどの間にサムスンやSKハイニックス、ASMLなどの半導体関連企業のトップが相次ぎ来日しており、「日本が本気で半導体産業を育成しようとしているのか確かめに来ている」と述べた。半導体製造装置市場のシェアを32%、半導体材料市場については56%を日本企業が持つ。「サプライチェーンの中で日本企業の役割は大きい」(南川氏)。

 その上で、日本政府の半導体産業育成プロジェクトに言及した。2024年にはTSMCが熊本県に建設中の工場が稼働するなど、28nmプロセスなどの“レガシー”とされる半導体工場を作るStep1がすでに始まっている。Step2では、日米の連携で2nm以下の次世代半導体技術を開発する取り組みがスタートする。Step3は量子コンピュータや光電融合などの実現となる。南川氏は「うまくいけば、日本の市場は相当広がる。技術開発の大きな拠点にもなる」と期待した。 

日本政府の半導体産業政策
日本政府の半導体産業の復活プロジェクト[クリックして拡大]出所:経済産業省

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