パナソニックコネクトの3階建て構造改革は8割まで進捗、今後も力強く迷いなく推進:製造マネジメントニュース(3/3 ページ)
パナソニック コネクトは、前身であるコネクティッドソリューションズ(CNS)社時代から積み重ねてきたさまざまな取り組みの成果や、2022年4月1日付に発足した事業会社として進める今後の方針などについて説明した。
成長事業とコア事業を伸ばすソフトウェアとクラウドの役割
今回の会見には、パナソニック コネクト 執行役員 常務・CTOの榊原彰氏も参加した。同社の成長事業、コア事業とも、ソフトウェアやクラウドの果たす役割が大きく、日本IBMや日本マイクロソフトで技術系役員を務めてきた榊原氏の貢献が期待されている。
まず成長事業については、ブルーヨンダーの北米顧客20社へのヒアリング結果から60のユースケースを抽出した上で、2022年度は2つのユースケースにフォーカスしソリューション化をスタートする。1つは「ライブプライシング」で、電子棚札への価格表示の動的な変更を可能にするソリューション。もう1つの「ヤードマネジメント」では、画像認識や測位技術によって、物流倉庫におけるトラックのチェックインや入庫位置などの確認が容易になる。これらのソリューションは、ブルーヨンダーがフロリダで開催した年次ユーザーイベントで披露しており、好評を得ているという。
成長事業では、ブルーヨンダーのSaaSソリューションの拡充に向けてM&Aを行う方針を示している。榊原氏は「ブルーヨンダーは、計画系からリテール、実行系までSCMを幅広くカバーしているが、コロナ禍でサプライチェーンが大きく変わる中で、ラストマイルやサプライチェーンネットワークなどが新たに必要になる技術があり、これらをM&Aで組み入れていきたい」と説明する。
なお、ラストマイルはUber Eatsなどの最終顧客に直接商品を届けるデリバリーのプロセスを担う技術であり、サプライチェーンネットワークはこれまで企業間で決まった納入元/納入先とだけやりとりするのが一般的だったサプライチェーンについて、さまざまな企業とつなげられるようにする技術である。
コア事業では「製品の設計開発とサービス、それぞれの質を向上していく上で、ITやソフトウェアの活用が重要になる」(榊原氏)という見方を示した。例えば、ノートPCのレッツノートはその高い堅牢性を実現するために、開発の早い段階からシミュレーションを活用している。この知見やノウハウを、他事業の設計開発プロセスに展開することで、開発期間の短縮やコスト低減につなげられるとする。一方、サービスの質の向上では、製品の状態をIoT(モノのインターネット)やクラウドとの組み合わせによって顧客の困りごとや品質の低下などを見いだすことで実現する。
また、コア事業のハードウェアと連携するソフトウェアやクラウドの開発は、事業部ごとに行うのではなく横串を通して推進していくことになる。樋口氏は「ブルーヨンダーから学んだやり方を、コア事業の質を向上するのに役立てる上で榊原の役割は大きい」と述べている。
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