2022年後半は半導体不足が解消し調整局面へ「それでも足りないモノは足りない」:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
コアスタッフが足元の半導体市況や今後の展望について説明。2020年後半から続く半導体と電子部品の厳しい供給不足が全般的には解消に向かいつつあり、今後約半年〜1年間は調整局面に入る可能性が高いという。ただし、32ビットマイコンやパワー半導体などは入手しにくい状況が続いており、これらの製品については供給不足が続く見込みだ。
入手できないモノが絞り込まれたので、調達意志も強くなっている
適正納期で入手できる製品が増えてきていることもあり、全般的に半導体不足は解消しつつある。ただし、先述した不足している製品は納期がさらに悪化している。例えば、FPGAの“2年待ち”という状況は2021年度とほぼ変わっていない。一方、入手しやすい製品は在庫になり始めている。これは、2021年度にNCNR(ノーキャンセルノーリターン)という売り手優位の条件で発注した製品の入荷が始まっているためだ。
半導体不足が解消されつつあるものの、ユーザーの購入意思欲は高いという。戸澤氏は「必要な100の半導体と電子部品のうち70が入ってこない状況では、製品の製造そのものを諦めてしまう。しかし、入手できないモノが20くらいに絞り込まれたこともあり、製品の製造に向けてそれらを調達する意志が強くなっている」と述べる。
今後に向けて起こり得る4つのシナリオも提示した。1つ目は、2022年夏〜秋にかけて、2021年度に1年納期で発注した製品の入荷が始まって在庫になり、在庫になった製品の生産余力が不足している製品の生産に振り向けられて、足元の半導体不足が解消に向かうというシナリオである。2つ目のシナリオでは、2022年秋〜2023年に、2020年後半から半導体メーカー各社が実施した生産ライン増強の効果が出始める。3つ目のシナリオは、2024〜2025年に稼働を始める工場の新生産ラインの効果が出始めるというものだ。ただし、4つ目のシナリオでは、生産ライン増強や新生産ラインの効果を需要が上回り、半導体不足が常態化する。どのシナリオになるのかを左右するのは「最先端プロセスではなく、数世代前の25〜55nmプロセスを用いるレガシー半導体への投資」(戸澤氏)だという。
DXとGXで長期的な半導体需要は今後も力強く伸びる
会見には、Omdia シニアコンサルティングディレクターの南川明氏が登壇し、足元の半導体市況や、長期的な需要動向について解説した。南川氏は「直近1カ月でエレクトロニクス製品の需要が急減しており、急速な逆回転が始まっている」と指摘する。これは、2020年にコロナ禍で大きく落ち込んだ民間最終消費支出が、2021年は反動で大きく伸びたが、2022年はさらにその反動で低下すると想定されるためだ。実際に、テレビやPC、スマートフォンなどの市況は停滞しており、それらに用いられるディスプレイドライバ、7nm前後のプロセスのアプリケーションプロセッサ、DRAMなどの半導体は在庫が積み上がり始めている。
これから約半年〜1年間に調整局面が訪れるものの、長期的な半導体需要は今後も力強く伸びるというのが南川氏の見立てだ。これまで半導体市場をけん引してきたのは、PCやテレビ、スマートフォンなどを中心とする個人消費だったが、今後はデジタル化に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)や、カーボンニュートラルの実現に向けたGX(グリーントランスフォーメーション)が求められる。「現在の半導体市場のうち、DX関連は25%、GX関連は5%を占めているが、2030年にはDX関連が60%、GX関連が10%と大幅に伸びるのではないか」(南川氏)。そして、これらDX、GXの半導体投資を支えるのが政府消費だ。今後は、個人消費に加えて底堅い投資を行う政府消費も積み増されるので半導体市場の成長が続くというわけだ。
さらに、米国のGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon.com、Microsoft)などが研究開発費の3分の1を投入しているメタバース関連の需要もこれらに上乗せされるという。
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