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テルえもんが見た「日本ものづくりワールド 2022」現地レポートテルえもんの3Dモノづくり相談所【番外編】(3/3 ページ)

“テルえもん”こと、小原照記氏が、東京ビッグサイトで開催された「日本ものづくりワールド 2022」の展示会場をレポート。3Dプリンタや3Dスキャナーなどを中心に、実際に見聞きした中から、テルえもんイチオシの装置やツール、最新技術などを紹介します!

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設計者も切削加工が気軽にできる時代に!?

 切削加工となると、3Dプリンタとはまた別の、高度な技術と専門知識が必要となります。今回の展示会では、普段、加工を行わない設計者や生産技術者などでも気軽に使える切削加工機が展示されていました。

 岩間工業所の「ALMODEL」は、切削するためのプログラムであるNCデータを作るCAMの操作が不要で、3D CADデータがあれば、プログラムが自動生成され、面倒な段取りもする必要なく、まるで3Dプリンタのように扱える切削加工機です。

 対象となる加工材料は、アルミや樹脂が主で、ワーク加工サイズがX:257mm、Y:182mm、t:20mm。ATC(自動工具交換)は3本、自動回転治具機構により両面加工にも対応します。ポイントとなる3D CADデータからのNCデータ作成は、オートデスクの「Fusion 360」のAPI(Application Programming Interface)を活用することでCAM操作の自動化を実現し、NCデータを出力できるシステムを開発したそうです。

 また、岩間工業所では「LINE」や「Slack」と連携した「IoT監視システム」もオプションで提供しており、外出先でも稼働状況を確認できます。発売は2023年4月ごろを予定しているそうです。価格は未定で、顧客へのヒアリングを進めながら決めていくとのことでした。

岩間工業所の3Dプリンタのように扱うことのできる新しい切削加工機「ALMODEL」
岩間工業所の3Dプリンタのように扱うことのできる新しい切削加工機「ALMODEL」[クリックで拡大]

 他にも、切削加工が気軽に行えるようになるツールとして、アルムの「ARMCODE1」も注目です。これは、3Dデータの形状を解析し、NCデータを完全自動で出力するAI(人工知能)ソフトウェアとなります。NCデータの自動出力以外にも、作業指示書、工程表、見積書などの自動作成も可能です。

 通常、切削加工するためには、CAMでNCデータを作成する必要があります。筆者も実際に操作や講習会などを行っていますが、どうしても専門的な知識やノウハウが必要となるため、普段、加工をしていない設計者や生産技術者の人たちが切削で部品を作るとなると、自然とハードルが高くなります。

 しかし、今回紹介した装置やツールを使えば、複雑な形状や高精度を求めるようなものは無理だとしても、設計者や生産技術者の人たちが、自ら切削で試作や治具、製品などを作ることも不可能ではなくなります。3Dプリンタによる金属造形の技術も進展しつつありますが、材料費や精度の面ではまだ発展途上ともいえます。そういう意味で、設計者や生産技術者たちが切削を活用できるようになり、より安価に、スピーディーな製品開発、生産準備へとつなげることができる、こうした選択肢は歓迎すべきものだといえます。

 今は非常に便利な時代となり、3D CADデータをアップロードして加工依頼ができるサービスも充実していますが、今後、設計者や生産技術者が3Dプリンタを扱うのと同じように、自ら積極的に切削加工を行う時代が来るかもしれませんね。

リアル展示会の良さとオンラインの活用

 展示会場は、コロナ禍以前に戻ったかのような人の多さで大盛況でした。少しずつコロナ禍前の生活に戻っていることを実感できました。筆者もここしばらくは東京出張ができずにいましたので、本当に久しぶりのリアルな展示会への参加となりました。

 ここ数年はオンラインセミナーなどを活用して、いろいろと情報収集はしていましたが、やはり現物を見ることで得られる情報量は圧倒的に違いますね。サイズ感や重さ、触り心地など、自分の目で見て、肌で感じることで、具体的な活用イメージが膨らんできますし、出展企業の説明員から直接お話を聞くことで、より詳しく製品や技術について知ることができます。

 また、とても印象的だったのが、「こちらのWebサイト/YouTube動画に詳しい説明がありますので、ご興味があればぜひご覧ください」という案内が多かったことです。出展企業がコロナ禍で蓄積してきたWebコンテンツやYouTube動画の情報を、補足資料として案内してもらえるのは、来場者としても後でゆっくりと情報を整理できるのでありがたい施策だなと感じました。

 やはり、リアルは良いですね。久しぶりにお会いする人、オンラインでは話したことはあるけど、リアルでは初めてお会いする人など、対面で直接会話ができ、いろいろな相談やお仕事につながる実のある話もできました。オンラインはオンラインの便利さ、良さがありますが、久しぶりに体感したリアルの良さ、楽しさは格別なものでした。

 今回紹介し切れなかった装置やツールもたくさんありますので、今後の連載の中で紹介していければと思っています。どうぞご期待ください!

⇒「メカ設計 イベントレポート」のバックナンバーはこちら

筆者プロフィール

テルえもん/本名:小原照記(おばら てるき)

いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。


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