新型コロナウイルスの超高感度で迅速な全自動検出装置を開発:医療機器ニュース
理化学研究所らは、新型コロナウイルスを全自動で迅速に検出できる「opn-SATORI装置」を開発した。9分以内にウイルスRNAを1分子レベルで識別し、PCR検査と同等の検出感度を有し、変異株の判定も可能だ。
理化学研究所は2022年5月26日、新型コロナウイルスを全自動で迅速に検出できる「opn-SATORI装置(automated platform on SATORI)」を開発したと発表した。9分以内にウイルスRNAを1分子レベルで識別し、PCR検査と同等の検出感度を有する。1塩基単位での変異も識別可能で、変異株の判定にも活用できる。東京大学、京都大学、東京医科歯科大学、自治医科大学との共同研究による成果だ。
opn-SATORI装置は、2021年に研究グループが開発した世界最速の新型コロナウイルス検出法「SATORI法(CRISPR-based amplification-free digital RNA detection)」の感度と精度を大幅に向上させたものだ。特定のRNA配列を認識する核酸切断酵素Cas13酵素と蛍光レポーターをバイオセンサーとして使用している。
検出したいウイルスRNAに相補的な配列を持つガイドRNAとCas13の複合体であるCRISPR-Cas13a、検体中のウイルスRNAが複合体を形成すると、Cas13が活性化されて蛍光レポーターを切断するため、ウイルスRNAの有無を1分子単位で識別できる。
opn-SATORI装置は、新規CRISPR-Cas13aの使用、磁気ビーズを用いた新規サンプル濃縮技術により、SATORI法と比べて検出感度が約1400倍向上した。また、ガイドRNAの配列を最適化することで1塩基レベルでの配列識別が可能となり、オミクロン株などの既知の変異株を判定できるようになった。
「opn-SATORI装置」による全自動COVID-19感染診断。(A)感染診断の模式図(B)「opn-SATORI装置」(C)臨床検体を用いた陽性判定結果(D)臨床検体を用いた変異株判定結果[クリックで拡大] 出所:理化学研究所
社会実装を見据えて、全工程を自動化。ランニングコストは、SATORI法の約4分の1となる1検査あたり約2ドル(約265円)まで下げた。この価格は、PCR法や抗原検査法と同等だ。
新型コロナウイルスの検出だけでなく、疾患バイオマーカーの検出にも活用できるため、尿や血液など侵襲性の低い液性検体を用いた診断法のリキッドバイオプシーへの応用も期待できる。
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