IVIつながるものづくりアワード2022発表、最優秀賞は冷間鍛造の金型異常検知に:FAニュース
インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)は2022年6月9日、「IVIつながるものづくりアワード2022」の審査結果を発表し、「鍛造プレス機のインプロセス管理」が最優秀賞に選ばれた。
インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)は2022年6月9日、「IVIつながるものづくりアワード2022」の審査結果を発表し、ニチダイや三菱電機、ダイキンらの社員による「鍛造プレス機のインプロセス管理」が最優秀賞を受賞した。IVIで2021年度に活動した17の業務シナリオワーキンググループの中から選ばれた。
熱を加えず常温のまま金属を変形させる冷間鍛造は表面がきれいに仕上がり、寸法精度も高い。一方で、大きな圧力がかかるため金型が破損することもある。金型の異常は外観から分かりづらく、従来は熟練者の経験と勘に頼っていた。そこで、荷重センサーや変異センサー、AEセンサー、カメラを取り付け、リアルタイムでデータを収集し、分析することで金型の予知保全、製品の品質管理向上に取り組んだ。
受賞理由は「鍛造という、製造技術の中でも見える化がとても難しいテーマに取り組み、複数のセンサーによる多面的なアプローチを実施した。複雑な因果関係を持ったデータを見やすく分かりやすく解析している部分にも創意と工夫があった。今後もさらに発展していくと期待でき、最優秀賞にふさわしい成果と認められる」(IVI)としている。
CIOFやカーボンニュートラルに関連した取り組みも
優秀賞は「人・モノの実績可視化IV(次世代IE追究)」と、「設備のダイナミックケーパビリティの向上」が受賞した。
「人・モノの実績可視化IV」では、マツダなどが稼働状態の異なる複数のラインに部品を供給するリフトマンの作業効率化を行った。従来、リフトマンの経験や勘に頼っていたラインへの部品供給のタイミングを、ラインに取り付けたカメラとAI(人工知能)を用いた画像分析でパレットの部品残量や入替予定時刻などをフォークリフトに表示するシステムへと変更し、リフトマンの作業時間やフォークリフトの走行距離を削減した。「設備のダイナミックケーパビリティの向上」では、テービーテックらがセンサーなどの設備変更を行った際の情報システム部門による調整を省き、即座に上位システムへ反映できる仕組みを実証実験した。
その他、IVIの製造データ相互流通システムCIOF(コネクテッドインダストリーズオープンフレームワーク)を活用して中小企業のCO2排出量算出を図った「企業間データ流通のマネタイズモデル」(神戸製鋼所他)が特別賞、CIOFを通して発注者、受注者間での製造進捗情報共有の仕組みを構築した「中小製造業が安価にできるデータ連携」(荏原製作所他)が技術賞、従来困難だった砂充填過程を可視化し、砂型の不良発生を防ぐ「シリンダーヘッド鋳造用砂型の品質管理」(三菱電機他)がプレゼンテーション賞を受賞した。
IVI理事長の西岡靖之氏は「コロナ禍での行動制限に加え、グローバルなサプライチェーンの混乱の中で、製造業のデジタル化が正念場を迎えている。2022年度より、CIOFの適用事例やカーボンニュートラルをテーマとした斬新な取り組みも始まり、さらにこれからの展開が期待できる」と話した。
IVIはIoT時代における“つながる”ものづくりを“緩やかな標準”というコンセプトで実現することを目的に2015年に設立された。2022年5月26日時点で国内外226社、654人が参加している。
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