品質不正にもつながるスキル管理のばらつき、デジタル化による可視化で改革を:製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)
多くの製造現場ではスキルマップを作成し、技術者のスキルを見える化、管理、運用する体制を整えている。品質マネジメントの国際規格であるISOの監査などで必要になるためだ。一方で現在、技術者のスキル取得状況を可視化することで、経営戦略の実現や品質不正の防止に役立てようとする動きもあるという。デジタル上でのスキル管理サービスを展開するSkillnote 代表取締役に、国内製造業におけるスキルマネジメントの現状や課題について話を聞いた。
事業所ごとに評価基準がバラバラ
MONOist アナログからデジタルのスキルマネジメントへと切り替えるに当たり、問題は生じないのでしょうか。
山川氏 デジタル化に当たっては3つの壁が生まれ得ると考えている。1つは「作成の壁」だ。そもそもスキル体系化が十分にできていない。どのような基準、観点で体系化を進めるべきか分からないケースだ。
2つ目は「運用の壁」である。マネジメントシステムを導入したが、データ更新の頻度が低く活用しきれていない。データ鮮度が悪く、スキル取得済みのはずの技術者が、実はもう長く作業に従事しておらず技術力に問題を抱えていた、ということもある。その反対で、高頻度で教育を行っているのに、スキル取得状況に全く反映されていない事例もあり得る。
3つ目の「活用の壁」は、データを投入してもそのデータをうまく活用できていないケースだ。これでは結局Excelの時と状況が変わらない。こうした壁につまづく企業は多い。
MONOist 2つ目と3つ目の課題感は理解しやすいですが、最初の「作成の壁」はデジタル化以前の問題にも思えます。
山川氏 もちろん、これまでスキルを全く体系化していなかった企業がいるとは思わない。しかし、部署ごとに独自のスキルマップを作成している、スキル項目の粒度もバラバラという企業は実は珍しくない。10段階評価を採用している事業所もあれば、○×やアルファベットで評価している事業所もある、といった具合だ。
これまで人員の配置換えが少なく、部署ごとに閉じた考えが一般化していたことの表れとも考えられる。さらに言えば、ISOなどの監査で求められているから、と受け身の姿勢でスキルマネジメントに取り組む雰囲気も強く、全社でのデータ活用につなげたいという動きは鈍かった。本当にデジタル化を進めるのなら、まずは項目、評価基準を事業所間で統合することから始めるべきだ。
MONOist そもそも品質マネジメントの観点から見て、各事業所が独自基準でスキルマネジメントを実施することは問題にならなかったのですか。
山川氏 ISOの監査で指摘事項などを受けても、その都度対処して乗り切ってきたのではないか。ISOの力量評価に関する項目は、ざっくりと言えば「品質を維持するために必要なスキルを定義する」「不足しているスキルについては教育し、取得させる」といったような、非常にシンプルな内容しか書かれていない。悪く言えば、いかようにでも解釈できてしまうものだ。
ただ、昨今、品質不正の発覚が相次ぎ、ISOへの信頼性自体が低下しつつあるようにも思う。そのため監査の指摘が厳しくなり、従来の管理状況では通用しなくなっている。紙による管理では対応が追い付かないという声も増えている。
MONOist スキル管理を通じて品質管理改革に自発的に取り組む企業も増えるでしょうか。
山川氏 そう思う。受け身の姿勢では生き残りが厳しいと認識され始めている。先ほど戦略人事の話をしたが、こうした目的でSKILL NOTEの導入を検討する企業は最近になって増えたもので、むしろここ数年間は現場から、品質不正対策として声掛けをもらうことが多かった。
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