DXのイメージを具体的につかむ、シーメンス製品の体験施設「DEX Tokyo」開設:製造マネジメントニュース
シーメンスは2021年6月1日、デジタルツインやロボットによる自動化など、製造工程のデジタル化に貢献するソリューションが体験できる「DEX Tokyo」を開設した。デモ展示を通じて、デジタル化ソリューションやロボットの導入前後のイメージを具体的に把握することが可能になる。
シーメンスは2021年6月1日、デジタルツインやロボットによる自動化など、製造工程のデジタル化、デジタルトランスフォーメーション(DX)に貢献するソリューションが体験できる「DEX Tokyo」(東京都品川区)を開設した。デモ展示を通じて、デジタル化ソリューションやロボットの導入前後のイメージを具体的に把握することが可能になる。
日本では初開設
DEX Tokyoは、シーメンスが提供するソリューションを顧客が実際に体験し、自社に導入した際の具体的なイメージをつかむことを目的とした施設だ。シーメンスに自社のデジタル化について相談に来た顧客を、主な訪問者として想定する。DEXとは「デジタルエンタープライズ エクスペリエンスセンター」の略称である。現在、DEXはグローバルで43カ所に設置されており、これまでに約9万人が訪問した。DEX Tokyoは日本では初めてのDEXとなる。
デモ展示としては、例えば、ロボットを用いた製造ラインのバーチャルコミッショニングなどがある。同展示では、実在するシーメンスのPLC(プログラマブルロジックコントローラー)製造工場における製造工程の一部を事例として取り上げ、DEX Tokyoに設置された実機のロボットがプログラム通りに動作する様子を見学できる。
生産ラインを構成するベルトコンベヤーなどの周辺にある自動化装置も含め、装置構成やプログラム動作を確認可能だ。ライン立ち上げ前にこうした作業を行うことで、ロボットの予期しない動作トラブルを未然に防ぎ、ライン立ち上げに要する時間やコストを大幅に短縮できるようになる。
この他、AGV(無人搬送車)を用いたデモ展示も行う。AGVが稼働する様子を見るだけでなく、機体を構成するパーツや、開発、制御のためのプログラミングツールについて、シーメンスのエンジニアから説明を受けられる。顧客ごとに最適な走行方式や運用台数などを提案する他、導入予定場所の見取り図があれば、最適な経路を算出するシミュレーションも行う。AGVの導入経験が少ない顧客でも、最短時間で取り入れられるようにサポートするという。
シミュレーション環境下でのオペレーター訓練も体験できる。訓練中のミスの回数や、ミスをした箇所も統計データとして取得できるため、これらのデータを生産管理部門や設計部門で活用して課題の対策に生かすことも可能だ。
最終段階での認識ギャップ発覚を防ぐ
また、シーメンスは顧客のDXを促進するため、デジタルエンタープライズサービス部門を新しく立ち上げた。従来のカスタマーサービス部門を拡張する形で新設した。DXの必要性は理解するものの、どのように進めるべきか分からないという企業を主な対象として、現場課題の気付きや現場診断、デジタル化のデザイン、実装、最適化などを一気通貫で支援する「デジタライゼーション コンサルティングサービス」を提供する。
DX支援におけるシーメンス独自の強みについて、同社 デジタルエンタープライズ&ビジネスディベロプメント部長の鴫原琢氏は「経営コンサルタントは現場の気付きやアセスメント、ビジネスプロセスのモデリングなどは担当するが、ツールなどの実装は不得意だ。一方で、SIer(システムインテグレーター)はツールやソリューションの導入、最適化は行うものの、気付きやアセスメントは担当しない。当社はこれらを一気通貫で提供して、プロセス産業からディスクリート産業まであらゆる産業を支援できる。当社はハードウェアとソフトウェアのトータルソリューションを通じて、リアルとデジタルを統合できる唯一の企業である」と語った。
さらに同社 代表取締役社長兼CEOの堀田邦彦氏は、DXに取り組むも上手くいかず失敗する事例も多くあることを踏まえて、「DXの成否は、企業トップと現場の人間が課題感を共有して、同じタイムラインで取り組んでいけるかどうかにかかっている。だが、DXプロジェクトの最終段階で実はお互いに認識のギャップがあったと判明することもある。DEX Tokyoで実際に展示などを体験した上で、相談してもらえれば、早期の段階で認識の相違を浮かび上がらせることができるだろう」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 製造業DXに必要なPLMの3段階デジタル化
本連載では製造業DXの成否において重要な鍵を握るPLM/BOMを中心に、DXと従来型IT導入における違いや、DX時代のPLM/BOM導入はいかにあるべきかを考察していく。第2回はDXを実現するまでに必要な「3段階のデジタル化」を解説する。 - 凸版印刷、製造業向けデジタル化支援ソリューションのクラウド版を発売
凸版印刷は、製造業向けデジタルトランスフォーメーション支援ソリューションのクラウド版「NAVINECTクラウド」を発売した。「生産点検」「見える化」「在庫管理」「帳票管理」「トレース」の5カテゴリーを順次提供する。 - 「真のカイゼン」が攻めのDXに必要な筋肉を育てる
本連載では製造業が取り組むべき、DX時代の「真のカイゼン」について解説する。第1回ではDXで何を実現すべきなのか、また「攻め」と「守り」のDXの違いは何かについて紹介したい。 - 製造業の「稼ぐDX」に向けた戦略を立案するための5つのプロセス
サブスクリプションに代表される、ソフトウェアビジネスによる収益化を製造業で実現するためのノウハウを紹介する本連載。第9回は、製造業がソフトウェアで「稼ぐDX」を実現させるための戦略立案の代表的な5つのプロセスを紹介する。 - 製造業DX推進のコツは、経営トップと現場に精通するリーダー社員の2段階で
日本のモノづくりの現状を示す「2021年版ものづくり白書」が2021年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2021年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第2回では「製造業のニューノーマル」の主軸として紹介されている「レジリエンス」「グリーン」「デジタル」という3つの視点について掘り下げる。