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日産がLiDAR採用の運転支援技術、2段階の衝突回避で複雑な場面に対応安全システム(2/2 ページ)

日産自動車は2022年4月25日、障害物や車両との衝突を緊急回避するための次世代センシング技術を発表した。障害物を操舵アシストで回避した後に歩行者を検知してブレーキを制御するというように、2段階での緊急回避を実現する。この運転支援技術「グラウンド・トゥルース・パーセプション」は技術開発を2020年代半ばまでに完了させ、新型車に順次搭載する。

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 今回、LiDARを使った次世代センシングを発表したのは、一定の検知性能を満たすLiDARが出てきたためだ。具体的には「垂直視野角が25度以上」「検知距離300m」「分解能0.05度」である。現在量産されているLiDARでは、検知距離だけでなく垂直方向の視野角も足りないという判断だが、こうした性能が達成されれば、3次元で物体を把握する強みが発揮できるという。


日産自動車がLiDARに要求する性能[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 カメラは3次元で空間を把握するのが不得意で、画像から3次元化するアルゴリズムは複雑になってしまう。また、ミリ波レーダーは物体の形状を捉えるのが難しい。LiDARはカメラとミリ波レーダーのこうした弱点を補う。カメラでは情報量の多さやモノの判別に向く特性を生かすため、AI(人工知能)も多用する。3つのセンサーを統合処理することで、人間の認知能力に近づけられるとしている。

 「スカイライン」をベースにした原理実証のための開発車両では、ルミナー製のLiDARを使用している(量産車でもルミナー製の採用が決定しているわけではない)。LiDARの信号処理アルゴリズム、センサーフュージョン、状況変化を基にした車両制御アルゴリズムは日産自動車の社内で開発中だ。シナリオベースのシミュレーションでは、アプライド インテュイションとパートナーシップを組んでいる。実用化に向けては、システムとしての検証にもリソースが必要になり、実走行でのテストだけでなく、シミュレーションでのテストも不可欠だ。

 開発車両ではLiDARをルーフに設置している。より空間として検出しやすくするためだ。サイズは高さ50mm×幅260mm×奥行140mmまで小型化するめどがついているが、量産車に搭載する際もルーフに搭載するためさらなる小型化に取り組む。さらに、量産車に搭載できる車載コンピュータの開発や消費電力の低減も開発課題となる。

9割の事故の場面をカバー

 日産自動車 専務執行役員の浅見孝雄氏は「数年前はセンサーや認識精度に課題があったが進化が進んだ。技術的により安全性の高い自動運転ができるという手応えが出てきた。今のADASでカバーできるのは実際に起きる事故のシーンの3割程度だが、今回発表した技術で9割まで引き上げられるのではないか。注意深いドライバーであれば避けられる事故は、シナリオに織り込んで回避できなければならない」と語る。

テストコースで運転支援をテストする様子(左)。搭載されているセンサー(右)[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 緊急回避のためのセンサー技術や制御技術に注力するのは、海外自動車メーカーの製品で発生した重大事故が念頭にある。「なぜこのような事故が起きるのか、どう正していくか、議論が盛んだが、事故のシーンを1つ1つ見ると、現状の技術で回避できる範囲を超えている。より高度な支援でなければ、防げない事故がある」(日産自動車 AD/ADAS先行技術開発部 部長の飯島徹也氏)。

 各社が開発する、回転部品のないソリッドステート方式のLiDARについては現状では感度に課題があり、日産自動車が必要とする検知性能が出せないという。感度の課題をクリアするにはまだかかると見込む。「垂直視野角が25度以上」「検知距離300m」「分解能0.05度」という性能についても、現時点で達成できるのはスキャニング方式だとみている。


発生頻度は高くないが、実際に起きうる事故でも回避することを目指して開発した[クリックで拡大] 出所:日産自動車

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