産業施設におけるエネルギー消費量の実態調査結果を発表:脱炭素
富士経済は、産業施設におけるエネルギー消費量の実態調査の結果を発表した。最終エネルギー量の約94%を占める製造業主要20業種では、2019年度のエネルギー消費量は836万2222TJ、CO2排出量は2億8983万トンだった。
富士経済は2022年4月11日、産業施設におけるエネルギー消費量の実態調査を実施し、その結果を発表した。経済産業省の「2050 カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で電化、水素化、CO2回収の方向性が示されたことを受けて、産業施設におけるエネルギー消費とCO2排出量の実態を捉え、将来を展望している。
最終エネルギー量の約94%を占める製造業主要20業種では、2019年度のエネルギー消費量は836万2222TJ、CO2排出量は2億8983万トンだった。電化については、非鉄金属製品の溶解やプラスチック製品の成形予熱などが一部プロセスで主流となるなど、短中期的には脱炭素の中心的な役割を担うとみている。
総エネルギー消費量50万TJ超級のエネルギー多消費型に分類される鉄鋼業や有機化学、石油製品・石炭製品は、エネルギー消費量が膨大なため、2019年度の電化技術の普及率は1割未満となっている。電化技術やカーボンニュートラルに対応した燃料普及想定時の鉄鋼業のエネルギー消費量は2019年度比8.3%減、輸送用機械器具(自動車)のCO2排出量は同年度比40.2%減と予測する。
注目市場は輸送用機械器具やプラスチック製品で、電化技術、カーボンニュートラル燃料普及想定時のCO2排出量は、2019年度比でそれぞれ40.2%減、38.8%減と予測。輸送用機械器具では、鍛造や熱処理、塗装乾燥、洗浄などで蒸気、燃料から電力に移行し、CO2排出量が削減できるとしている。
製造業20業種262工場のエネルギー管理等指定工場を対象に実施したアンケート調査では、CO2排出削減の取り組みとして、「非生産プロセス機器での省エネ型機器導入」「生産プロセス機器での省エネ型機器導入」に取り組んでいるところが多かった。
削減に向けた課題としては、「設備機器導入・更新に対する資金調達」「排出削減方法に対する手詰まり感」が4割に達した。
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