DXニーズ旺盛でPDM/PLM市場は前年比2桁成長、製造業の市場調査レポート:製造マネジメントニュース
富士経済は2022年2月18日、製造業のDXに関する調査結果をまとめた「2021年版 DIGITAL FACTORY 関連市場の実態と将来展望」を公開した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を背景とするDX推進ニーズの高まりとともに、設備投資需要の落ち込みからも回復傾向にある様子などが伺えた。
富士経済は2022年2月18日、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する調査結果をまとめた「2021年版 DIGITAL FACTORY 関連市場の実態と将来展望」を公開した。調査からは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を背景とするDX推進ニーズの高まりとともに、設備投資需要の落ち込みが持ち直しつつある傾向などが伺えた。
調査では「設計・販売・計画システム・ソリューション」「生産現場システム・ソリューション」「PA(プロセスオートメーション)システム・ソリューション」「ネットワーク・セキュリティ」「関連サービス」の5項目について、2021年の市況と将来予測を発表した。
設計・販売・計画システム・ソリューションの2021年の市場規模は、前年比8.1%増の1兆7652億円(見込み値、以下同)となった。COVID-19によってDX推進ニーズが高まったことが追い風となった。特に、PDM(製品データ管理)/PLM(製品ライフサイクル管理)やサプライチェーンの見える化プラットフォーム、製造業向けローコードプラットフォームなどの成長率が高い。例えば、PDM/PLM市場の2021年の市場規模は1860億円となり、前年比12.7%増と2桁成長を遂げている。半導体や電子部品、家電関連での需要増加に加えて、自動車分野においてグローバル連携や複数拠点連携を目的にした導入が進んでいるという。単体システム、ソリューションの導入や更新、拡張に加えて、システム、ソリューションの連携が本格化しており、新たなモノづくりプラットフォームの構築に向けた動きがさらに進むと予想される。
生産現場システム・ソリューションの2021年の市場規模は前年比34.3%増の1782億円となった。業務の効率化や最適化、自動化による生産現場のデジタル、IT化が加速しており、システムやツールの導入が企業規模を問わず拡大し、ユーザーの裾野が広がっていることなどが要因だという。特に、スマートグラスやAR(拡張現実)プラットフォーム、ロボット遠隔ソリューションなどの伸びが期待されており、今後、多品種少量や変種変量生産への対応に向けて、さらに需要は増加すると見られる。
PAシステム・ソリューションの2021年の市場規模は、前年比2%増の1兆9792億円となった。2020年はCOVID-19の影響で設備投資が減少して前年比マイナス成長となったが、DCS(分散制御システム)や安全計装システムの需要が回復に向かうと見られている。プロセスシミュレーターは石油やガス関連の投資回復に伴って需要が増えるとともに、デジタルツインの中核製品としての伸びが期待されている。
また、LIMS(ラボ情報管理システム)やQMS(品質管理システム)などは、製薬分野などでの着実な需要増加が期待されるとともに、化学や食品製造分野での採用拡大も見込まれる。この他、設備保全管理システムはプラントの設備保全におけるデジタル化に不可欠な製品として、安全対策ソリューションは作業員の安全確保を目的として、それぞれ需要増加が予想されている。
ネットワーク・セキュリティの2021年の市場規模は、前年比27.4%増の2640億円となった。遠隔地にある機器同士の相互連携や制御の高度化のため、工場向けセルラー基地局の需要が急増していることに加えて、ネットワーク化の進展でサイバー攻撃やIoT(モノのインターネット)機器のウイルス感染、障害による生産設備の停止リスクに対処する必要性が高まっている。このため、制御システム向けファジングツールやFA UTM(統合脅威管理)/次世代ファイアウォールの需要が今後も伸びると想定される。
関連サービスの2021年の市場規模は、前年比23%増の4567億円となった。2020年前半は投資が抑えられていたが、後半からはテレワーク環境に適した提供形態やメニューの拡充によって、クラウドサービス(製造業向け)やオンデマンド部品調達プラットフォームなどが順調に伸びた。2021年以降は、新型コロナ流行を契機として従来の生産体制を見直す動きが加速すると見られており、各サービスの需要が増加する可能性があるという。
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